自らの想う物と相手の考えることの隔たり

・・・日本という国でありながら生まれ育った外国人夫婦の子ども、エドワード・・・このエドワードという子どもは小さな頃から天才と呼ばれるような行動を度々取ってきた。立ったり喋れるようになる時期が早かったことを手始めにして四歳にもなる頃には日本語と英語の使い分けを自在に可能とし、十歳になる頃にはマイナーな言語であったりを除いて主要な言語をマスターするといったような離れ業までこなすようにだ。

ただそんな天才児であるエドワードだが、そんな言語以外に関しての自身の天才さ・・・いや、異彩さを普段は両親にすら隠す形で動いていた。何故なら自分には前世と呼ばれる物の記憶があり、その経験があるからこそそれだけの事が出来ているという自覚があったからである・・・



















「博士~、コーヒー飲むか?」
「おぉ、飲ませてもらうぞ」
・・・エドワード、普段は周りには愛称としてエドと呼ばれている帝丹高校一年生の少年。
そんな彼は自身の家の近くにある研究者の阿笠という老人の家に高校終わりに制服も着替えずそのまま来て、勝手知ったるとばかりにコーヒーメーカーを片手にコーヒーがいるかと阿笠に尋ねて阿笠もまた普通にその声に笑顔で答えた。
「すまんのぅ、エド。こんな風に色々としてくれて」
「博士にはこっちも世話になってるからお互い様ってとこだよ・・・今日も飯作って行くけど、メインは塩サバな」
「・・・何回も同じようなことをまた聞くが、君本当に日本人じゃないのかのう?作るメニューが日本食ばかりなのは何でじゃ?」
「栄養価を考えてんのもあるけど、博士の体を考えてだよ。特にその出っ張った腹の事を考えりゃ肉は少な目にして、野菜や魚を取った方がいいんだよ・・・この前の健康診断の数値、結構悪かったんだろ?」
「うっ・・・そ、それを言われるとのう・・・」
そこから朗らかに会話をしていく二人だが、ジト目で出っ張った腹を見ながら話をするエドに阿笠は苦笑いを浮かべるしかなかった。言われたように問題なしの健康体と言えるような体ではなかった為に。
「それに博士も知ってるだろ。俺の両親もそうだけど、俺が日本で暮らしてて長いってこと。つーか帰省で国に帰ったことなんて俺の記憶じゃ片手で数えるくらいしか無い上に、そんな長く向こうで過ごしたこともねーんだから日本での暮らしの方が圧倒的に俺はなげーんだよ」
「下手な日本人より余程日本人らしいのはよく知っとるが、食事までそれらしくというか普通の人より作れるようになる必要はあったのかのう・・・」
「親がいねー中で飯作るってなったら、栄養のバランスを考えりゃ日本食が最適なんだよ。それに俺一人で暮らしてんならカップ麺だとかでいいとか思ってたかもしんねーけど、飯食わせてーってのもそうだし博士を健康的にさせたいって思うんなら尚更にな」
「ワシに食わせたい、か・・・そう言われると健康からとは言え、嬉しいのう・・・」
そんな風に会話をしていく中でエドがぶっきらぼうに頭をかきながら漏らした言葉に、少し照れたように阿笠は頬をかく。



(あー、照れてんな博士・・・つーか前世じゃ親がいないのにはある程度慣れちゃいたけど、前世も含めてじいさんや婆さんって立場の人ってピナコの婆ちゃんくらいしかいなかったからこんな感じはなんか新鮮だな・・・)
そんな阿笠の姿に仕方無いといったように笑いつつ、エドは考える。自身の前世までもを含めたこの関係は悪くないと。









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