恵まれた場所より放逐された探偵

「・・・ですからこそ僕は特命係にいるより、別の所に行く方がいいと思い何も言わずに見送ったのです。特命係にいたところで彼のやった事が手柄として認められることなどありませんし、彼にその事を言った所で意味などないと思いましたが・・・何より探偵になりたいというなら僕にそれを止める権利などありませんからね」
「・・・ま、そこはな。色々ここで話をしたが、工藤が仕事を辞めようとも探偵になろうとも俺達がそんなことを止めろなんか言う義理もねーか・・・ま、悪かったな警部殿。色々と聞いちまってよ」
「いえ、構いませんよ」
そうして新一に関する考えを語る杉下に角田も納得した笑みを浮かべて謝りを入れ、杉下は笑顔を浮かべつつ振り返り置いてあったカバンを手に取る。
「では僕はもう帰ります。工藤君を見送りましたし、今日はもう何かを頼まれることもないでしょうからね」
「おう、お疲れ様」
杉下はそうして壁にかけてあった木の名札を裏返しつつ帰ると言い、角田は特に反論をすることなく特命係の部屋を後にする杉下の背を見送った。



「・・・杉下右京からあんな言葉を聞けるとはな。ただ裏を返せば、それだけ工藤新一が厄介だったかを指し示してるって訳か・・・」
そうして杉下の姿が見えなくなったのを確認しつつ、カップに口をつけた後にそっと角田は漏らす。
「・・・さて、これから工藤はどうなるかね?府警に移るなんて事態になりはしたが、あいつは杉下右京から乞われたからとは言え、一緒にいたくないって言葉を引き出したような奴だ。例え服部とかって人物が何かを言ったってそう簡単に変わるとは思えないし、探偵になりたいって形であっさり辞めちまう可能性も高いんだろうが・・・ま、そこから先は俺には関係無いことだ。精々俺らに火の粉がかからないように頑張ってくれりゃいいくらいにしか思わねーな」
それでそのままどうなるかについてを真剣な様子で口にして行く角田だが、最後にはふと軽い笑みを浮かばせてから特命係の部屋を後にして行く・・・基本的には善人ではある角田だが、だからと言って別に好きでもないしこれからも交流するような予定のない相手を気にかける程は人は良くないために・・・


















・・・それから以降、警視庁にて工藤新一の名を聞くことは一切なくなった。府警で大人しくしてなのか閑職に追いやられたか、いよいよを以て警察自体を辞めたのか・・・そういった情報など全くだ。

しかしかつて警視庁で新一に関わってきた者達は微妙な違いこそあれど、新一についてを気にすることなどなく動いていった。最早新一とかかわり合うことなどなかったのもあるが、その一月足らずの後の時間に特命係に新たな相棒が来ることになり・・・様々な波乱が巻き起こっていくことから、特命係に定着しなかった者への関心などないというよう・・・









end









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