「・・・彼からすれば僕が言ったことはポーズのようなものだと思ったのでしょう。警察として本当ならやってはいけないことを言いはするけれど、あくまで上司らしくということや他の課の方々に向けての物だったと。そして僕自身がその言葉を反故にするようなことをしていたことが尚更そういった考えに拍車をかけたのかもしれませんが、あくまでも僕は細かいことが気になったことや真実が知りたいだけであって・・・本来の警察のやり方としてはよろしくないことは重々承知しています」
「へっ？・・・承知して今までそんなことをしてたって言うのか、警部殿？」
「はい。内村刑事部長や大河内さん達から度々お叱りの言葉をいただいてきましたが、僕がやってきたことが警察として正しいといったように考えたことはありません。あくまで僕は自分の気持ちのままに行動していただけです。それが正しくないと言われることは承知の上ですし、罰を与えられるというならまた当然の事だと思っていますし事件が解決出来ても手柄だなどとは思いません。工藤君はその点では僕と違うというか、真逆な考えだったと思いますがね」
「真逆、ねぇ・・・そう言われてみりゃ確かにそうだな。あんたと工藤の能力は近いんじゃないかと伊丹達は言ってはいたが、確かにそう聞いてみりゃ考え方は違うか」
だがそうして話が進む中で出てきた意外な言葉に角田はたまらず呆けた声と表情を浮かばせるが、杉下から更に返ってきた言葉の数々にあぁというように納得していた。






・・・角田が警察内で杉下と付き合いが長いとは言ったものの、その中で度々独断専行を行うことについてどう思っているかを聞いたことはなかった。それは杉下右京だから仕方ないという気持ちと考えがあったこともあるが、どうしようもないことをしたなら知らぬ存ぜぬで杉下に巻き込まれないよう逃げる事をドライでいて、冷静に頭の中のどこかで見積もっているからだ。

だから敢えてそこらへんについてを角田は聞くことはなかったのだが、そもそもの話として杉下は事件の際の発言や行動が突発的でいて人に理解されない事が多いものの、それ以外の時の杉下は基本的に物腰穏やかで静かな紳士であり常識的な人物だ。その辺りの事については角田も分かっている。

その上で杉下が言ったように事件や気になる事があればとことん突き詰めるその姿勢に関してを聞いてみれば、自然と角田も納得がいっていた。直接内村や大河内といった叱るなりたしなめるといったことをする者達が杉下にそう言っている場面などほとんど見たことはないが、それでもそういったことの後に杉下がその叱責などに対して不平不満を口にしたことが無かったことにだ。

・・・杉下右京はそういった常識を知りつつも、その常識や今の自分の立場に囚われたままでは解決しない物があると見たからこそ後の自分がいかなものになるかなど考慮せず、権力的な力でストップをかけられても突破口を見出だし突き進む事が出来る。しかし同時に自身の非も理解しているからこそ、内村や伊丹達のような言葉を甘んじて受け入れられるのだ。本来は正しいのはあちらなのだと、歯止めがかからない本能と共に存在する回りすぎる頭でだ。

そんな杉下の事を少なからず分かっているからこそ角田も同意した・・・確かに新一と杉下は違う存在なのだと。









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