恵まれた場所より放逐された探偵

「・・・正直な所、僕もその答えを聞いた時に角田課長と同じような気持ちを抱きました。そして同時にキャリア組に入るつもりだったといったように言っていたことに関して、彼が警察学校に入る前までにどんな風な事をしてきたのかを聞いていったことで彼は筆記試験には合格のラインには到達はしていたものの、面接で落とされたのだろうと僕は見ました。彼の能力なら筆記試験で躓くとはまず思えませんからね」
「あぁ、確かにそれは頷けるな。俺もあいつが大学の時の話を聞いたが、端から聞いてて問題行動だってのが分かることってのをいくつもやっといてそんなんでキャリア組に入れる訳ねーだろうよ」
杉下もまたその意見に同意しつつキャリア組に入れなかった理由は面接にあると口にすると、角田は当然だろうといったように返した。過去の事が響いているのは明白だと。






・・・二人が揃って面接で落ちたという予想を立てたのは新一の頭の出来は認めていたというのもあるが、試験を受ける前にやっていたことを聞いたからこそその前科によりキャリア組に入れる訳にはいかないと考えられたのだろうということからなのだが・・・事実その考えは正しくて、実際は大河内も監察官としてその事を把握していた。かつて警察学校に入る前に試験を受けていて面接で落ちていたことを。

なら何がキャリア組に相応しくないといったように思われたのかと言えば、単純な話として・・・新一はトラブルメーカー過ぎたのである。キャリア組として相応しくないかどうか以前に、捕まってはいないし事件の解決に奔走したといった新一からしての名目とはいえ、警察沙汰になったことなどそれこそ数知れぬ程の事をやってきたためにだ。

これは警察に限ったことではないが、本来雇う側が雇う人に求める物として重要視するのは能力もそうだが揉め事を起こさない人物であることだ。それは当然の事である・・・折角人手が欲しいから雇うというのに、問題を起こされればその人物が働けないと言った問題だけで済まなくなる事も有り得る。雇った側もその煽りを受ける可能性がこの現代の情報社会では非常に高いのだ。

そしてそれがキャリア組という警察きっての限られたエリートとして入ってきた人材であったなら尚更である・・・そもそもキャリア組とは将来の警察を背負って立つ逸材と見られる人材であり、警察の人間として見本とされるような立ち回りをするのが望まれる。しかし新一がそんな警察組織の一員としてルールをちゃんと守るなど想像がつかないのは大学までに何度も何度も何度も何度も・・・何度言っても堪えたような様子も見せず、事件解決の為と平然と一般人の立場で決まりを無視していったことから明確である。

そしてそんなことをノンキャリアの人間がやることもそうだが、キャリア組として入った人間が平然と行ってしまえば様々に問題が発生してしまう・・・それを許せばキャリア組だからこんな暴挙が罷り通るのかだとか同じことを自分達もやっていいといった声が出てくるのもそうだが、そこで新一の問題行動が世に出てくるような事になれば確実に面倒なことになるのは目に見えていた。警察の根底を揺るがせる騒ぎになりかねないということでだ。

他にも考えられることは色々とあるが、実際に会って面接をしたことも加わって新一の能力を惜しむよりも、下手な混乱を招かないようにするために面接官によってキャリア組への梯子は外されたわけである。能力よりも人格を見られ、危険視される形でだ。









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