恵まれた場所より放逐された探偵

・・・大河内は監察官という立場として本来なら特命係の行動を律するのが正しいのであるが、杉下の能力を高く買っていることからその能力を見込んで敢えて処罰行為に出ることは避けている。可能なら自分の駒として将来使う事も考えてだ。

だがそれはあくまでも特命係としてというより、杉下個人が手柄に執着の欠片も見せてないからこそだ。それこそ手柄を手柄としてなどと言っていたなら、特命係はとっくの昔に取り潰しになっていたのは間違いなかっただろう。いい加減に特命係は潰すというように言われてだ。

しかし杉下の性質からそんなことにならずに済みはしたが、そんな時に工藤新一の事が話に出てきたことから大河内は考えたというより感じたのだ。『工藤新一は杉下右京の同類なのではないか?なら特命係として使えるのではないか?』と。

確かに報告にある限りでは杉下と違い功名心が強いと感じられる部分はあるとは思ったが、杉下と同類ならどうにかなるのではないか・・・そう考えて大河内は特命係での様子見についてをするようにと動いたのだが、その結果が前述の通りであり手柄を手柄として求めるという悪い意味で予測を超えてきたのである。

その結果に大河内はそれこそラムネを何個も噛み砕くくらいには苛立ちを浮かべたし、これほどに工藤新一の我に功名心が強いのかという誤算を認めるしかなかった。杉下自身が新一と共に動くことをよしとしないこともだ。

だが事実は事実であるし、内村に伊丹達からは杉下よりもかなり厳しい言葉が出てきた。要約すれば杉下よりも厄介な人物が現れるとは思わなかったといったような言葉だ。

特に現場で一緒になることが多かった伊丹達は確かに能力は認めるが、事件を楽しんでいるとしか思えない笑みを浮かべるその姿に好意など持てるはずもないと言った。一応そういった態度を見た時に注意はしたが、事件の解決が出来ると思って出た笑みをなんで逆に何で批難されるのかといった返しを何度もされたことで、もうどうしようもないと見て何も言わないと決めた上で・・・一応何だかんだで付き合いが長いから杉下警部の事は少しは分かるが、杉下警部自身も工藤新一をどうかと思っている節があると見たと。

そして杉下にも話を聞いてみた結果が気持ちを言うように言ったからとは言え、実際に快く思っていないという物だった為に大河内の考えは頓挫して工藤新一をどうするか・・・となった時に新一の事を聞き付けた服部からの申し出があったことから、大河内は正気を疑いつつ内村刑事部長に話を通して刑事部長も交えて話をしていったのである。いかな工藤新一の問題行動があったかを話した上で、工藤新一を受け入れるのはいいが問題があっても返却は受け付けないと。そしてその言葉に服部が頷き、新一の大阪行きが決定したのである・・・






「・・・それにしても、どうしてその服部って人は工藤新一を受け入れると決めたんでしょうか?とてもじゃないけど彼の能力はともかくとしても、警察として使える人材だなんて説明は大河内さんや内村刑事部長もしていないんでしょう?」
「確かにそこは俺も疑問ではあったが、刑事部長は返却受付はしないことを快諾したことに機嫌を良くしていた上で興味など無くしていたからな。それに下手に本人に話をしても言いたいことは分かるが、こちらの方が間違ってるといったような事を言ってきて面倒なことになりかねない可能性があった・・・だからもうこちらとしては深く突っ込むつもりはない。何故引き取る気になったのかを聞きたいとは思いはするが、もう終わったことだからな」
「ふ~ん・・・ま、それなら仕方ないか。僕も興味がない訳じゃないけど、変に事態がこじれたら困るのは大河内さん達ですからね」
そんな様子に話題転換だと服部についてを口にする神戸だが、もう追求するつもりはないと言う大河内の話の中身に軽く返すに留めた。神戸としてはもう特命係から離れた以上、下手にもめ事を自ら起こすつもりも焚き付けるつもりもなかった為に。









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