恵まれた場所より放逐された探偵

「まぁ杉下警部に関しては確かに意外ではあったが、内村刑事部長達に伊丹警部達に話を聞いたら揃って気に食わないと隠すこともなく不機嫌な様子で口にしたからな。それも杉下警部も言っていたように自分の手柄は自分の手柄というようにしないのが不満だといったような態度が一層気に入らなかったともだ」
「まぁ特命係が事件を解決しても一課か担当した所の手柄になるのが普通でしたからね」
「というより今のお前なら分かるだろう・・・特命係が今も存在しているのは小野田前官房長の事もあるが、そういった手柄を手柄として扱えと主張してこなかったからという部分があるからとな」
「えぇ、そこは知っていますよ。僕の前の亀山さんは度々その事は言っていたらしいと言うこともね」
そんな杉下についてから話題を特命係の手柄についてに変える大河内に、神戸も勿論と口元を笑ませながら頷く。






・・・今大河内が言ったが、警視庁において厄介者とされる部署である特命係が今も尚というか十年以上も存在しているのは主に二つの理由があるからである。小野田前官房長がバックについていたことと、特命係が事件の解決を手柄として扱うように要求してこないという理由がだ。

しかし一つ目の理由に関してはもう小野田が死んでしまっていないことに加えて地位を投げ捨ててまででも特命係を守ろうとはしていなかったので、それまでに何度も特命係が解散させられるのではないかと思わせるような事態はあった事に加えてその小野田ももういないことから、特命係を守ろうとする者は現在いないということになる。

そんな特命係だが、二つ目の理由である手柄を手柄として求めてこなかったこと・・・これは今まで特命係が存続してきた理由として実は馬鹿に出来ない程に大きな理由であった。何せ特命係が解決してきた事件はその数もだが、質的な意味でも様々に面倒な事が多いのである・・・人材の墓場とまで呼ばれる特命係がルール違反を犯し解決したことを褒め称えて評価して手柄としたなら、他の警察のやり方が間違っていると言っているも同然になりかねないというのがその筆頭だ。

だが杉下もそうだが新一レベルの人間などゴロゴロいるわけない上、そんなやり方で失敗したなら誰が責任を取るかという話になるが、その時は十中八九担当した者達の責任となり上が責任を被るまいとするのは目に見えていた・・・言ってしまえば杉下に新一のようなやり方は極めて高い能力があってこそであり、能力のない者達にとってはむしろ不適切なやり方なのだ。

故にこそそんな一個人の失敗で上が責任を取るなどという事態は避けたいであろうし、そんな能力主義のやり方では成り立たないからこそ警察という組織として特命係に新一のやり方を認めることが出来ないのだが・・・特命係が解決してきた功績が小さくなかったこともあるからこそ、未だに特命係が存在している理由である。

代表的な例を挙げろと言われるとキリがないが、簡単に言っても未解決事件になりかねない可能性の高かった事件を解決し、テロリストによる被害を抑えるどころか無事に納めることに成功し、警察に大ダメージになりかねない事を阻止したりもしてきた・・・ただそうして活動する中で警察だけでなく政治的な事にも構わず首を突っ込んで掘り出されたくない事までもを掘り起こすことからよく思われないことも多いが、それでも特命係でなければどうにもならなかったことも多かったのだ。

その為に特命係は一応という形ではあるが取り潰しという事にならずに済んできたのだが、そこで特命係の手柄はどうなのか・・・と言っていたなら、逆に取り潰しになる可能性は非常に高かったのは目に見えていた。何故なら手柄以上にそういった快く思ってない面々へ特命係に対する口実を与えることになるからである。いくら事件を解決したと言ってもそのやり方は違法だといったような口実をだ。









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