いつかを変えることの代償 後編

「どちらにせよ、毛利さんはあまり気にされない方がよろしいですよ。一応安室は毛利さんへの協力要請はしないとは言いはしましたし、工藤君を出張らせないように早目に片付けるようにしてほしいと要請しましたからね」
「・・・新一に出張らせないようにだと?」
「今の話の続きのような事になりますが、確かに工藤君は組織と対峙する際には喜び勇んで戦力にはなってはくれるでしょう。ですが彼はその事に集中するあまり、他の事をおざなりにしかねません。今事件に集中しているのだから、学校の事はどうでもいいだとか心配する方々への配慮などをね・・・その点では毛利さんは工藤君の現在の人間関係を把握していないようですし、蘭さんがいない状況で恋人とは言わずとも想いあうような仲の人物がいるのかだとか・・・どちらにせよ身近な人々へ出来る事をやろうともせず、かかる迷惑に心配はそれこそ事件解決したならそれでいいだろうと軽い気持ちで終わらせようとするでしょう。ですがそんな事は年端もいかない子どもが行っていいような事ではありませんし、望ましくない方に自信をつかせかねません。一つの例として挙げるなら自分は探偵として公安やFBIに頼られるほど優れているんだから、ならもうこのまま学校にも行かずに探偵として旗揚げしよう・・・と」
「それはっ・・・あまりにも短絡的過ぎじゃねぇのか・・・!?」
「ですから一つの例としてと申し上げました。ただ工藤君の性格上、彼は自分の決めた事を取り下げるような事はまずないのでしょう?奥さんとなった蘭さんからの涙ながらの訴えに結局は自分の中の探偵としてかくあるべきかを優先し、結果として離婚に至り少なくとも毛利さんが逆行するまでは復縁することも無かった・・・これらを考えれば、自分の実力に自信を持てば学校に行くことに学歴など大したことではないと思うか、学校に行くとしても探偵業をやる傍らの暇潰し程度にしか考えずに学生生活を享受するでしょう・・・まぁ確実にこう言ったことになるとは決まった訳ではありませんが、それでも工藤君が自分は探偵になるという気持ちを今の時点で強めるような事態を引き起こすのはあまり望ましい事ではありません。そんなことになれば工藤君の両親が家にほとんど帰らないのもあり、自分の判断だけで学校に行かないかもしくは中途退学なんて道も歩みかねませんからね」
「っ!・・・否定出来ねぇな、それは・・・」
「えぇ。まだ他にも色々ありますが、そういった可能性のある工藤君だからこそ出張らせるような事態を避けるようにと安室に言ったのです。彼の能力を知っているだろうからこそ、彼に頼ると言った安易な行動を取れば増長を招きかねないとね」
「・・・あーーーっ・・・本当に否定してぇけど、否定出来ねぇ・・・」
更にいかに新一に対して感じていたことを併せて安室に話をしたのかを事細かに口にしていく明智に、小五郎は重ね重ね頭を抱えて擁護が出来ないと漏らした。






・・・新一は探偵として誰かに頼られる事に異を唱えることはない。むしろ探偵としての力を発揮出来るとあらば、頼られてから動くなどというまどろっこしい事などすっ飛ばして自ら首を突っ込むタイプだ。

そしてその中の一面として明智が小五郎に告げたよう、そして小五郎自身否定が出来ないと言ったように事件と推理以外の部分を蔑ろにしかねない部分が大いにあった。自分の好奇心のままに動く彼は、その好奇心を優先することが何より自分もそうだが周りにとっても大事だとばかりに。

実際に周りにとっても少なからず影響、それも大抵良くない事が起きた事件についてを解決することから悪影響を無くす事自体は悪くないと言える。だがそれが新一の良識という部分に繋がるかと言えば話はまた別である。









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