恵まれた場所より放逐された探偵

「信じられへんみたいな感じに思っとるんが丸わかりな顔やな、工藤。けど大河内監察官には俺が言ったみたいには言うのは止めてもらうのを前提に言わせてもらうなら、そもそもお前が警察に入って特命係に配属になる前まで同僚もそうやけど上司みたいな立場の人らにはえらい煙たがられとったんやろ?」
「っ・・・それは否定出来ねーけど、そいつはあの人達の頭が固かったからだ・・・俺は別に悪いことをしたわけじゃねーどころか、事件が早く解決出来るように動いてきたんだぞ・・・!」
服部がその反応にまずはとばかりに杉下以前の場の上司についてを口にすると、新一は自分は悪くないとばかりに苛立ったように反論を向けてくる。






・・・警察官になった新一はノンキャリア組だったことから始めは巡査としてスタートしたが、元々の能力の高さに加えて事件を積極的に解決していったことからノンキャリア組としては異例の早さで警部補にまで出世をした。この辺りはコネだったりがある程度上の立場に行ったら出世には必要になってくる部分が大きかったりもするが、基本的に実力のある者が上に行けるシステムとなっている警察だからこそである。

しかし本来なら警部補まで行けば警視庁での勤務が可能になったのだが、新一の在籍していた警察署においてその時には新一のことは完全に厄介者だというように見られていたのだ。

これはある意味仕方無いというか、新一自身が蒔いた種でもあった。警察官になるんだから誰もが誰も事件を解決したいし、忙しく職務に全うしたい・・・という者もいないことはないが、警察官も人であるからそういったことばかりをやりたい者だけが集まる訳ではない。むしろ事件などそもそも起きないというか、起きるのはともかくとしても自分達に事件を持ち込まないでほしいと願う者もいるのだ。この辺りは個人差もあるため、一概に非難は出来ないだろう。

それでそういった者達からしたら新一の行動は迷惑極まりないというように見られていた。特に上司と言われる立場の者もだが、地位的には当時の新一と同じである十歳以上も上の人達からだ。






「・・・昔の俺やったらそこでお前に同調しとったやろうな。けどな工藤、お前自分は警察官やのうて探偵やと今でも思っとるんちゃうか?」
「それ、は・・・確かに、そうだよ・・・今警察に身を置いてるのはあくまで探偵事務所を開くためで、そんなに長くいる気は・・・」
「お前、自分で言っとって理解しとらんやろ・・・それって仕方無いから警察におるだけで、自分は芯から警察官やなくて探偵なんやって気持ちでおるんやろうけど・・・そんな気持ちが滲み出とったのもそうやけど、スタンドプレーでお前がやり過ぎとったからそんな評価になっとったんやぞ。本当ならある程度の班編成で事に当たらなならんのに、自分一人が事件に当たって周りのもんはほぼ置いてけぼりなばかりか精々鑑識から必要な情報をもらっていくばかりで、ちゃんとした形で班として他と協調して動くこともない・・・そして手柄は全部俺のもんいうようなことされて気持ちええわけないゆうのもそうやけど、ホンマに団体行動が基本の警察の一員なんかみたいに思われとったからそうなったんや」
「っ・・・それは・・・でも、事件を解決するには・・・」
「それが手っ取り早いがお前の言い分なんは分かるわ。けど今俺が言うとるんは警察官として周りの誰とも歩調を合わせへんお前の落ち度についてや。実際周りに合わせよういう気になんぞ最初はあったかもしれへんが、途中からどうでもいいかまどろっこしい思うて動いとったやろ?」
「っ・・・それは、正直そうだった・・・周りに合わせて動こうとしても、動きが遅かったり見当違いな方向に行くことばっかりだったからもう自分で動いた方がいいって思って・・・」
ただ服部が売り言葉に買い言葉と勢いで話をせずに一つ一つ確認するように話を進めていくと、新一は次第に勢いを失いつつ言葉を返していくしかなかった。関西弁自体は変わってこそいないが、以前の服部とは明らかに違う丁寧な話の流れに。










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