恵まれた場所より放逐された探偵

「・・・大阪府警に異動だなんて、どういうことだ・・・俺別にこっちじゃ知り合いなんかいないんだけど・・・」
・・・そうして異動と伝えられ荷物をまとめて荷物を送る手続きを終えた新一は徒歩で警視庁から出て、帰路につく道の途中でブツブツと呟いていた。いきなりの異動と言い渡された不満もあるが・・・
「杉下さんもいきなり俺が異動ってなったのに、角田課長達も含めて全く惜しむ様子もなく送り出したし・・・今まで一緒にやってきたのに、なんでなんだよ・・・?」
・・・新一としてはそれなりにうまくやってきたはずの杉下に角田課長達が、惜しむ様子もなく見送ってきたことだ。訳の分からない異動だというのに、小さな事が気になってしまうという杉下が全く疑問も何も言うことなくである。
「・・・よぉ。久しぶりやな、工藤」
「!?は、服部!?」
だがそうして歩いていた時に道路の曲がり角から現れた前世での知り合いであったスーツ姿の服部の姿に、新一はたまらず驚きを浮かべた・・・こちらで誰も知り合いがいないという状況から一人で頑張ってきたが、こうして服部に会うとは思っていなかった為に。
「おうおう、驚いとるな。まぁ俺もお前がこっちに来とるとは思ってへんかったが、警視庁でお前の名前を聞いてビックリしたで。まさかお前もこっちにおるなんて思っとらんかったからな」
「それは俺もだけど・・・なんでお前がここに・・・?」
「その説明はお前の家でしたる。こんな拓けた場所でするような話ちゃうからな」
「・・・あぁ、そうしよう」
その反応に満足そうな服部にどういうことかと聞きたそうな新一だったが、場所を変えて新一の家でと言われて神妙に頷いた・・・二人の事情に関しては色々と複雑な為、人に聞かれないようにするのは当然だと。






「なんや、狭いなこの部屋」
「仕方ねーだろ、あんまり給料高くねーんだから」
・・・そうして新一達は新一の住むアパートに来た訳だが、1DKという程度の広さでベッドとテレビのある場所の壁以外に本棚が立て掛けられていて、ほとんど推理小説の類いがその棚の中にギッシリ並べられており、中央に置かれたテーブル以外はろくにスペースがない。
そんな部屋をテーブル越しにあぐらをかきながら座って率直に狭いと言い切る服部に新一は給料のせいと言うが、その答えに服部は表情を引き締める。
「まぁええわ。別に俺はお前の部屋について話に来たわけちゃうしな」
「なら何をしに来たんだよ?」
「・・・率直に言うで、工藤」



「お前が大阪府警に異動になったんは、俺がお前の事を引き受けるいうたからや」



「なっ・・・!?」
・・・そして服部が口にしたまさかの事実に、新一は驚愕してしまった。何故と思っていた大阪行きだったが、その原因が服部だとは思っていなかった為に。
「驚いとるようやな。けどあのまんま特命係におってもあと一月もしとったら適当などっか別の部署に飛ばされて、そこで真面目に働かんかったら閑職につけられて辞めるかどうかみたいな状態に追い込まれとったやろな」
「な、何でお前がそんなこと言えるんだよ・・・!?」
「・・・大河内監察官から聞いたからや。元々お前を特命係に配属したんはお前が警察の一員として動けるかどうかを調べるためで、期限は特命係に来てから半年・・・それで駄目だったらお前を警視庁から離れてる所でいて、尚且つ現場に関わらへん所に飛ばす予定やったってな」
「!?」
だが更に服部から告げられた予測だにしていなかったまさかの言葉に、新一は再び驚愕する以外になかった。監察官という立場の人間がまさかそんなことを考えて動いていたなどとは思っていなかった為に。









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