恵まれた場所より放逐された探偵

この考えを新一は名案だと思っていた。確かに探偵にすぐになれないのはどうかとは思うが、だからと言って何処かの会社に勤務して何かが起きれば会社に迷惑をかけるかもしれないという危惧から、流石に工場の時でもうやらない方がいいと感じた上で、警察はそもそも事件と向き合うための場所であり前の目暮警部達のように関係を築けるようになれば探偵として活動しやすい下地を作れる・・・と。

故に新一はこの案を実行に移す事に加え、どうせならキャリア組になって早い内からお金を貯めるようにしようと国家公務員総合職採用試験を受けることにしたのだが・・・最大の躓きとして、この試験において新一は合格は出来なかったのだ。

この事に新一は正直な所、大半の部分で納得が出来なかった。試験は確かにかなりの数の人数の中から十人しか合格出来ないという狭き門に相応しく難しくこそはあったが、それでもそれなりに勉強してきて試験に手応えを感じていた上で面接の際にも淀みなく答えていけたと自負している。だから新一は自分が悪かったというより、他が自分よりすごく勉強していてそれで自分は落ちてしまったのだと言い聞かせるしかなかった。でなければ自分が落ちる訳ないと。

それで一応は区切りをつけて仕方無いと思った新一は、元々辞めるつもりでいるんだからノンキャリア組でもいいかと警察学校に入ることにしたのだ。そしてそうして警察学校で過ごし、警察官となった訳だが・・・






「聞くところによると特命係って人材の墓場だとかって言われてるって話で色々とやらかしてるみたいに言われてるって話だけど、それとはまた別にこの十年近くで色々と言われるようになったって聞いた・・・そんなとこに配置ってどうなるんだ・・・?」
更に考えを深めていく新一であるが、その真意が掴めないと表情が優れたものに変わることはなかった。






・・・警察学校から警察官になった新一であるが、キャリア組ではない以上は巡査という地位から始まったのだが最初は交番勤務という形であった。ただそこで新一は早目に出世してお金を稼ぎたいと思い勉強もそうだが、何かありそうなキナ臭い事に首を突っ込んでそれを解決して手柄を立てて出世をしたいというように考えて動いていった。

しかしそうして動くこと二年近くと言った時間が経ったのだが、そこで言い渡されたのは警視庁の特命係に配属という物だったのだがそう来てしまえば新一も独り言で言ったが、嫌でも考えざるを得なかった・・・特命係はここに送られたなら終わりだという人材の墓場だと言われていて、普通に考えるなら新一も辞めてもらいたいと思われていると考えたのだが、警察内部の人間だからこそ流れてくる特命係の噂から自分が特命係に入ることで、難解な事件を解決する役割を担うことを期待されているのではないかということも無いとは言えないのではないかと。

故に新一は推測だけではどうしても答えには行き着かず、悶々としながらも特命係に配属されることになってからは過ごしていたのだ。その真意が分からないというよう。


















・・・そのように色々と考えながら過ごしていた新一だが、特命係に配属となって警視庁の中を段ボールを抱えながら進んでいき組対五課という場所の脇にポツンとある特命係の部屋に入ると・・・そこには髪をオールバックにしていて眼鏡をかけた中年の紳士といった風情を感じさせる人物が紅茶のカップを口元に傾けているのを見付けた。









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