恵まれた場所より放逐された探偵

・・・そしてそんな風にして高校を出る際に新一が選んだ道はまず大学への入学であった。本音を言うなら前世の経験分もあるからまどろっこしいことなどせずに探偵になりたいところだったが、両親が応援しないと断言したことに加えて優作達と違い家庭環境として多額の援助など例え説得が成功しても出せないというのは分かっていたからだ。

その為に新一は時間稼ぎとお金を稼ぐのも兼ねて大学に入るのだが、ここでまず一つ躓いたのが普通の家庭環境だったが故にバイトもせずに大学生として過ごし、探偵として名を売ると言った生活など到底出来なかったことである。

・・・確かに家賃と生活費は払ってはもらいはしていたが、両親の給料の額から言わせればかなり新一に高い金を出してやってるのに、探偵をやりたいからバイトに時間をかけるなんて事をする気はないのでもっとお金をくれ・・・などと言えるはずも無かったためにだ。

故に新一は前世でも経験など無かったバイトをすることになったのだが、ここで続いての躓きが起こった。それはトラブルをよく引き起こしていき、長くバイトが続いても精々三ヶ月持てばいいくらいしか続かなかったからである。

しかし何故そんな短い期間しか続けられなかったのかと言えば、客商売ならあのお客さん怪しいと推理をしては悶着を起こし、工場など人目につかない所では何か問題があると見て他の従業員や工場とのトラブルを起こすなどというよう、行く先行く先で問題ばかりを起こしてきたからだ。

百歩譲って問題があったと見抜いたのはまだいいだろう。しかしこのご時世においてトラブル騒ぎなどを起こされたとしたなら、フワリとした表現で言うだけに留めても色々と厄介な状態になりかねないのだ。

現に客商売に関しては一度や二度程度はまだ新一が問題のある者達の事を解決したのは誉めはされたが、それが何度も何度も続いていく内にその店はトラブルばかりが舞い込む店というようになって人が離れていく事になり、最終的には新一に店の経営が良くないから辞めてくれとかなり気を使う形で言われて辞めることになった。

その次に表向きは人目につかない工場勤務になった時だが、こちらは客商売と比べるような物ではないと言っても工場という場所は客商売と違い大幅に人を集めて仕事を行う場である。そこにはバイトや派遣と言った者もいるし、正社員も勿論いるが・・・そんな多数の人々がいる中で揉め事というか事件に度々してしまい、その場の評判が悪くなってここには仕事を頼まないでおこうといった事だったりから次第に状況が悪くなり、最終的に工場の閉鎖が決まって新一もまた働き口を失った・・・お前があんなことをしなければ俺達は仕事を失うことはなかったという、怒りに恨みを向けられる形でだ。

・・・これにはさしもの新一も流石に堪える結果になった。バイト先が失われることになったこともだが、何より自分の行動の結果により大団円どころか全く逆の結果を生み出してそれを突き付けられ、不幸を生み出したという結果を受け止めざるを得なかったからだ。

ただそういった風な事はありはしたものの新一のトラブルに事件吸引体質に加え、そういったことを解決しなければ気になって仕方無いという性格は今生の両親から散々言われても治ることはなかった為、やるバイトやるバイトで問題が起きることになりろくに金を貯める事が出来ず・・・いざ進路を決めるとなった際、とても個人での探偵稼業が出来るような金額は手元にはなかった。

故にどうしようかと新一が考えて出した結論が何かと言えば、おっちゃんがやったように一先ず警察に入って金が貯まってから探偵を始めればいい・・・という考えであった。









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