苦い思いの乱れる未来

「別に構いませんが、そういうことですからもう一先ずは新一達に蘭については余程の事がなければ心配はいらないでしょう。後はアメリカに戻ってゆっくりと生活しつつ、お二人はお二人の関係についてこれからどうするか決められてください・・・あちらならお二人に対する世間体を気にする必要は薄いですし、妃さんと話をして離婚をすることになったのですから書類上はもう問題はありませんからね」
「「っ・・・!」」
だが構わないと言いつつ続けられた頼人からの言葉に、志保だけでなく小五郎もハッとして頬を赤く染めた・・・ハッキリと言葉にしてはいないものの、二人に結婚の決断をしてもいいのではと促すような物であったために。
「・・・確かに貴殿方は互いの責任を理解して責任を感じたのもあるでしょうが、そこで生まれた考えや思いが一時の気の迷いだけではないことにも気が付いてる事は私の家で暮らしている時に見た様子から感じていました。そしてそういった気持ちがあるからこそ、二人は揃って動いてけじめや父さん達との離別の為に動いてきたのでしょう・・・端から見た方々が貴殿方の行動を全員が全員正しいと言うとは限らないでしょうし、年齢差や立場とかなどで不審な目を向けてくる方もいるかと思います。ですが先程のやり取りで父さん達との区切りもつけたことですし、今度はお二人の関係にハッキリとした区切りをつけるべきではないかと思うんです。その方がお二人ももう気兼ねなく堂々と出来ると思いますからね」
「・・・それは・・・」
「そう、だな・・・今までは英理への申し訳無さもあったが、この事に関してはちゃんとけじめをつけるべきなんだろうな・・・」
「っ・・・おじさん・・・」
だが頼人が茶化すわけでもなく真剣にそうすることについてを勧めてきたことに志保は少し迷った様子を見せていたが、小五郎が腹を括ったという表情を浮かべけじめと口にした事に頬を赤らめ熱っぽい表情を浮かべた・・・昔はおちゃらけたオッサンという部分が大きかった小五郎だが、いざというときは決心する男であったしこの一連の流れの中でそんな部分が皮肉にも新一達のせいで大幅に削れていったために。
「取り敢えず私は自分の部屋に戻りますし、すぐに結論を出すようになどとは言いません。ゆっくりこれからの事について考えてください・・・二人でね」
「「っ・・・」」
その姿に頼人は椅子から立ち上がり微笑を浮かべて言葉を残してから部屋を後にしていくのだが、その意味深な様子に二人はまた顔を赤らめるしかなかった。邪魔物は消えるしどんな話し合いをしてもいいと言われているというようなものではないかと考えるように。






「・・・あの二人なら特に問題はないというか、今となってはもう互いが互いに離れるという選択肢を取ることはないでしょう。そしてその二人の決定に関してを新一達に伝えれば、さしもの新一達もどうしようもないと考えるでしょう・・・日本に戻し妃さんと毛利さんのよりを戻させ、宮野さんに色々と諦めてもらうなんて展開は。まぁそれも新一達の身から出た錆であると同時に、落ち着くところに落ち着いた結果です。これ以上に新一達が悪あがきしたところで毛利さん達はおろか、新一達も報われるような結果にはならないのは確実でしょうからね」
・・・そうして自分の取っている部屋に戻った頼人はノートパソコンに向かいキーボードを叩きつつ、新一達にはどうにもならなくなるだろうと同時にこれ以上何かが起きても新一達にもいい結果にはならないだろうと確信をしながら漏らす。






・・・もうここまで頼人達がお膳立てをした状況を無視して新一達が動けば、小五郎達の意思など関係無い形で縛ることになるのは明白である。少なくとも小五郎達の本意でないのは確実だが、意思を変えない小五郎達に業を煮やしたなら特に蘭が何か・・・有り体に言って暴力に頼ったならそれこそ完全に事態は終わることになってしまうのは明白だ。

だから頼人個人だけで考えた最後の仕上げの一手が、二人の結婚のお膳立てである・・・何だかんだで諦めきれない新一達を黙らせた上で、二人も変に他人という関係のままにいては志保が自分が犠牲になってそれで済むといった選択を取りかねないと考えたからだ。話を聞いて実際に共に暮らして頼人もよく理解したが、自分のやったことから自己犠牲でいけばいいといった捨て鉢な行動を取りかねないと。

だから頼人は結婚をしてもらえればそういったことにならないと考えたのだ。と言っても本人達が乗り気でないなら流石にそれはしないでおこうかと考えていたが、二人の中に生まれている絆とその姿を見たことから結婚をするようにお膳立てをしようと決めたのだ。歳の差はもう意味の無いものであるだろうし、自分も手伝う予定だからと。









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