苦い思いの乱れる未来

・・・赤井秀一という人物に関して、志保は元々からあまりいいイメージを持っていなかった。それは元々の出会いが良くなかったこともそうであるが、『灰原哀』として阿笠博士の元にいた時にもしもの事に備えてという理由で自分の事を盗聴していたと聞いたことに加え、頼人の言ったように自身を姉の忘れ形見のような存在として見て良からぬ方に行動する可能性の高さを感じたからである。

志保からしたら理由を聞くだけなら当時の自分を端から見たらまだ百歩譲って気持ちは分からないでもないというように認めてもいいが、盗聴という行為は明らかな犯罪行為でありプライベートを包み隠さず知られる物だ。そんな行為をされて当事者である志保の気分がいいわけない上、新一までもがお前にもしもの事がないようにと思ってといった言葉を吐かれた時には、勝手に自分の事を見聞きされて調べられて気分がいいわけないというように言ったが・・・赤井自身は暖簾に腕押しというように罪悪感を見せずに涼しく表情を変えず、もしもの時のためだと悪びれもしなかったことが志保からして赤井に好印象など持てないと考える一因となった。

そしてそんな風に余裕ぶった顔で何物にも縛られないといったように見せながら、そのままの様子で自身に接してくることが志保からしたらなおのことカンに障る物であった。姉との関係については聞いているが、だからと言ってそんな姉への気持ちを自身に投影させてくることが。その為に志保は日本から赤井が立ち去るまで出来る限り距離を置いていたのだが、そんな赤井が今の自分の事を知ったならどうするか・・・そう考えた上で頼人から話を聞いて、おぞましいという感情を抱いてしまったのだ。さも自分の判断が正しいのだとばかりに志保の行動を自身で抑制し、そんな表情を見せられる可能性が高かったということを考えると。






「まぁ赤井さんに話をしたら新一達に寄るだろうということもそうですが、何より日本が主体の公安と違ってFBIはアメリカを始めとして各国に人材を派遣している所ですからね。その中でも赤井さんのフットワークはかなり軽そうですから仮に私達の言うように動いてくれていたとしても、以降に考えなおせだとか宮野さんに主に直接色々と言ってきただろうことは想像はつきます。ですが安室さんに話をして工藤家での一件についてまとめ役になっていただいたことで、そう簡単に赤井さんもこちらに来れなくなったと言うわけです」
「・・・工藤君がもし誰かに助けを求めるなら所属的な意味に私との関係もあって赤井さんになるけれど、今回安室さんに先に話をしたことで赤井さんにどうにかって話を通すという考えにしにくくするという意味もあるけれど、何より赤井さんの制止役として安室さんが勝手に張り切ってくれることを期待出来るとの事だったわね」
「組織を壊滅させたとは言え二人の仲の悪さは改善される事はなかったとお聞きしましたし、むしろ壊滅をさせたからこそ一層安室さんからすれば赤井さんと対峙することがあるなら張り切ることでしょう。まぁ流石に何も言わなかったなら安室さんも自分が利用されるだけ利用されるのではと考えていたでしょうから、敢えてこちらの狙いを言わせてはいただきましたがやはり正解でしたよ。安室さんは毛利さんへの負い目もありましたし組織関連での揉め事、それも工藤家に毛利家関係が何かを起こしたとなったなら真っ先に言われるのは日本にある公安となり確実に面倒を被ることになる・・・そういったことを避けるため、そして心情的に赤井さんが向こうについて事態をかき回すというならこれからもこちらの方に肩入れしてくれるでしょうね」
頼人はそんな赤井に対してと安室に対してを話していき、その二人の因縁があるからこそ安室が動いてくれるだろうと確信していると口にした。









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