苦い思いの乱れる未来

「・・・貴方からしたなら組織を潰せて元の体に戻れたことは本懐であると同時に、表沙汰に公表出来ないとは言え探偵として名誉であるという気持ちを抱いたのは今となっては理解出来るわ。FBIにCIAに公安といった数々の機関でも壊滅が出来なかった組織を自分がきっかけとなって潰すことが出来て、そこで知り合った人達から向けられてきたのは違うことのない称賛・・・私はこの体に戻るまでは特に意識はしていなかったけれど、おじさんのことがあってから色々とあって頼人君の言葉で貴方は褒め称えられる事には慣れてはいても真逆の蔑まれて否定されるようなことには全くの免疫がないと考えたの。そしてそういった探偵として最高とも言えるような形での名誉があったからこそ、一層貴方はおじさんの態度が自分が悪かったことからなのだと認めたくはなかった・・・そうだと認めてしまうことは貴方にとって、自分が探偵として失敗したのだということになるためにとね」
「そ、そんな・・・そんな、ことは・・・」
「否定したいのでしょうけれど、否定出来ないのでしょう?自分が悪かったと認めたなら、今までやってきたことはなんなのかと思ってしまうから言い訳を探したい・・・だから貴方からしたら聞きたくないのは分かってて言わせてもらうけれど、貴方は自分がやってることは全て正しいのだと考えたいから自分が悪者になることは避けたいと考えてるのよ・・・そんなことは正義の探偵として望ましくないからと、事実を否定する形でね」
「っ・・・!」
更に続けざまに口にして行く志保の容赦なくその心中を抉っていく推察に、新一は顔色を青くしながらも否定の言葉が出てこなかった・・・事実、認めたくはないだろうが自分が悪いと感じてはいるものの悪者になりたくはないという相反する考えがあるから新一は諦めが悪く・・・どうにか許されて免罪符を得たいのだと。
「・・・だから工藤君。そんな風に謝るという意味についてを考えられてない貴方の為に貴方達を許すつもりはないし、私達も私達で貴方達に許されるつもりもないし毛利さんには落ち着いたらおじさんを私が誘惑したからこうなったんだって言われることも有り得ると思う・・・だからもうここで私達の関係を終わらせるべきよ。それで貴方が私達が今話した気持ちに考えを覆した所で、最大限に危険なのは毛利さんに変わりはない・・・それこそ貴方の功績の方が重要だとおじさんの怒りを毛利さんが否定したなら、その時にここでこうしておくのが正解だったという後悔しか生まれないわ。そしてそうならないという保証もないのに、貴方はそれでもなんて言葉を口に出来るのかしら?」
「・・・それ、は・・・」
「新一、もうよせ・・・毛利さん達の考えに気持ちはもう私達には覆せないと感じたし、本当に蘭ちゃんとそんなことになったら取り返しがつかないとかそういったレベルで済むような話ではない・・・だからもう毛利さん達との事に関しては受け入れ、そして蘭ちゃんをなだめていこう。それが私達に出来る毛利さん達への謝罪であり、償いだ・・・」
「父さんっ・・・!」
そうしてもう終わりにしようと蘭を引き合いに出す志保に優作までもが諦めたように言葉を発したことに、有希子共々新一は悲痛な表情を浮かべるしかなかった。三人の中で最も頭が回るはずの優作がそう言うしかないという現実を受け入れざるを得なかったために。









.
25/34ページ
スキ