苦い思いの乱れる未来

「と言うわけで今はこの場から離れていますが安室さんは父さん達に蘭が毛利さん達の元に来ないよう、そして三人には蘭のストッパーとして動いてもらうようにという約定を結んでもらうために改めてこちらに来るでしょうから、その時には素直に頷いてください。父さんは理解したでしょうし、母さんも新一も蘭の事を大丈夫と太鼓判を押せないということは否定出来ないでしょうからね」
「・・・言いたいことは、分からなくはねぇ・・・けど頼人・・・どうにかならないのか・・・?」
「その答えは先程毛利さん自身がお答えしたでしょう。どのように思われても離れる事を選びたいと。その答えがお二人の総意ですから、私はそれを受け入れるだけです」
「けれど・・・」
「待って・・・今まで黙っていたけれど、最後に私から話をさせて頼人君」
「分かりました。どうぞ、宮野さん」
それで場をまとめるように話を進める頼人にどうにかと食い下がる新一の声に、志保が意を決したような声で入ってきたことに頼人は許可を出して黙る。
「・・・ねぇ、工藤君。貴方に色々と世話になっていたり『江戸川コナン』になる原因の大元であった私にこんなこと言われたくはないかもしれないけど、言わせてもらうわ・・・過ちを起こしたことに対して許しを求めたいと思う気持ちは理解は出来るわ。けれどね・・・」



「自分が許されたいし許してほしいと思ってそうする為に謝るのなんて、本当の意味での謝罪なんかじゃないわ。むしろ謝るという行為を汚している行動よ」



「なっ・・・!?」
・・・そうして続けられた志保が口にした侮蔑の意志が込められた言葉に、新一は愕然として目を大きく丸くしてしまった。謝罪すら汚しているという、あまりにもな言葉に。
「・・・謝れば許してもらえることもあれば、そうでないこともある。それが大きな問題になればなるほど許してもらえるかどうかの難しくなりやすさは変わってくるし、関係性がいかなものかによってもまた変わるけれど・・・そうして謝って許す許さないで済む話以前に、謝るということは自身の非を認めてそれを悔いたというのを示すことだと私は思うわ。そしてそれを許すか許さないかを決めるのは謝られた側になると思うのだけれど、そこで許されたいと願うこと自体は人間の持つべき感情としては当然だと思うわ。けれど貴方からは謝るという気持ち以上に許されたいという気持ちの方が強いと感じたわ」
「そ、それは・・・」
「言ったでしょう、そういった気持ちを持つことは当然だと。ただ貴方はその気持ちが強すぎるし、何より自分が悪者みたいな扱いを受けるのは嫌だという気持ちも感じられるのよ・・・言い方は気に入らないかもしれないけれど折角自分があの組織を崩壊させて元に戻れたのに、こんな形でおじさんにミソをつけられると思わなかったといった考えの気持ちがね」
「っ・・・そんな、ことは・・・」
「・・・その反応を見ると、当たらずとも遠からずといった所のようね・・・」
「っ・・・」
志保が続けて謝るということについてを話す中で新一から感じた気持ちについてを口にするのだが、二つ目に感じた考え方についてを聞かされた新一がより戸惑いで声と表情が定まらなくなったことに、冷ややかな視線を向けると否定を新一は苦々しげながらも返せなかった。









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