苦い思いの乱れる未来

「ですから私は蘭を含めて貴殿方を説得するにはあまりにも賭けの要素が過ぎると判断し、蘭だけをここから外して貴殿方三人に蘭を止める役目を任せるようにすればいいと考えたのです。二人をこれ以上苦しませないようにすることと、毛利さんに対する贖罪という意味も含めてね」
「・・・そして私達もまた毛利さんに会うな、ということか・・・」
「ね、ねぇ頼人・・・言いたいことは分かるけど、条件を緩めるとか他にどうにかならないの・・・?」
だからこそそうしないことも含めて、新一達に蘭の制御を・・・と口にする頼人に優作は苦々しげながらも理解を示すが、有希子はどうにかならないかというよう焦りを浮かべながら伺いを立ててくる。
「言っておきますが、お金で解決と言うようでしたらそれは駄目だと話し合いました。理由としては固定の金額なら父さんの稼ぎなら億単位は軽いどころか十億の大台も突破出来るでしょうし、蘭がこれで許せという言い分を作ることになります。それにこれからも小説を書き続けるなら父さんからすれば、家に土地も含めた今ある全財産をなげうつくらいしなければ生活が苦しくなることもなく、そのまま稼ぐことはさして苦ではないでしょう・・・ですから金銭で手を打つことはしないようにと言いましたし、二人も頷かないと言いました。これは蘭に理由を与えないためにも譲るつもりはありませんが・・・そもそも条件に関してを妥協するつもりはありませんし、そうするなら安室さんに話をしてここに同席していただいた理由も無くなります」
「えっ・・・安室さんは私達とちゃんと話をするために呼んだんじゃないの・・・?」
「それも無いわけではないですが、一番の目的は蘭にこの場での決定に関して逆らうようなことは許されないと印象づけてもらう人員としての役目を担っていただく為です。安室さんに仲介を頼むことはこちらに我慢をしてくれと言われる可能性についても無いわけではないことを覚悟はしていましたが、先程言ったように暴力沙汰になったなら組織の件を話さなければ説明がつかないような事態になれば色々と面倒になる上、ちゃんと話をしなければ遠くない内に蘭が痺れを切らして行動を起こしてくる時が来る可能性が高くなっていく・・・そういったように話をしたらそれを止めるためにも自分がその場にいるし、蘭さんの抑止力になると言ってくださったんです。『安室透』としてではなく『降谷零』としてこれ以上の事が起きれば様々な機関も含めた問題になると判断したから、もうここで手を引くようにと言うようにすると」
「・・・だから安室さんはここに来たのか・・・」
しかし頼人は金は条件にならないと言うばかりか安室がここに来た理由が無くなると蘭への予防についてを話していくと、優作の感心したようでいて複雑そうな声が漏れる。そこまで考えていたことに、そんな考えがあったのだと場の空気もあって考えがつかなかったことに。
「他人事ではありませんよ、父さん。その話に関しては父さん達にも当てはまります・・・組織のやったことに関しては表沙汰になるだけで多々問題があることから、秘密裏にしなければならないから大々的に潰したことは発表ないし露見はしないようにとなったとのことですが、それが漏れるような揉め事を起こしてはならないとは分かっているでしょう。ですからここでの決定に関して反するであったり組織の事を漏らすようなことをするなら安室さんが動く事になっていますが、その安室さんは気持ち的な部分はあるのは否定出来ないにしても父さん達の方に協力は出来ないと言われました」
「何・・・!?」
「その理由を大きく占めるのは仮に毛利さん達に頷かせたとして、以降もこのような事にならない可能性の方が低いからと言いました。特に蘭は毛利さんに気を使おうとして失敗して逆鱗を踏み抜く可能性は今までの会話から十分に有り得ますし、万が一の事が起きたなら組織の事があったからこんなことになったんだと現実から目を背けて自分のせいじゃないと言うことは決してないとは言いきれません・・・ですから下手に綱渡りのような形で元のようになるよりは、もう互いに会わない方が何も起きなくて済むだろうからそちらの方がいいと安室さんは納得してこちらに寄ると言ってくださった訳です」
「うっ・・・!」
だが他人事ではないと告げられ話をされた安室の判断についての話に、さしもの優作も否定を返せず詰まった声を発するしか出来なかった・・・また何か起きるような可能性を案じるより、そもそも可能性すら出てこないようにするにはもう互いに近寄らないように距離を取る方が確実だと思った為に。









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