苦い思いの乱れる未来

「単純な話として、工藤家の一員として毛利さんに謝罪しなければいけないと思ったからですよ。私はその時に関わっていなかったとはいえ、家族のやったことですからね」
「だから頼人がその責任を負うって言うのか・・・!?」
「えぇ。ただ話をする中でもし蘭と新一達を納得させて別れたとなっても、米花町という同じ所で暮らすとなれば顔を偶然でも必然でも合わせやすくなりますからね。それに探偵として活動するにしても他の職業に就くにしても、毛利さんの顔に名前は今となっては悪い部分が強くなる形で知られ過ぎていて再就職もままならないときている・・・ならいっそ私の元に来てもらった方が今の毛利さん達にとっては色々と都合がいいかと思ったからそう誘いをかけたんですよ。そしてそう発案したところ毛利さんは英語は苦手ではあるけれど、そうしたいって思えたから意地で英語は覚えるから頼むと答えられました」
「えっ・・・ほ、本気なの小五郎ちゃん・・・!?」
「本気じゃなきゃんなこと言わねーよ」
頼人はその勢いに押されないまま自分の考えを口にしていく中で小五郎の意思の固さに有希子がまた驚きを浮かべるのだが、小五郎は全く表情を変えることはない。
「毛利さんの意志が固いことは既に確認済みですよ。現に父さんなら再就職先も斡旋出来るだろうし日本にいることも可能だと思うと勧めたんですが、父さん達に手を差し伸べられて助けられるのは絶対に嫌だと言われましたから」
「なっ・・・!?」
更にここで頼人が優作達の助けを完全に拒否するという意志があると口にしたことに、名前を出された優作は愕然とした表情を浮かべた。
「・・・それだけ俺はもう頼人を除いてあんたらに関わるのは嫌だ、ということです・・・あんたらは悪い人じゃないのは分かっちゃいる。ただもうあんたらがナチュラルに自分は俺より立場に実力は上だっていうような自信からの態度は、俺にとっちゃこれ以上はただ苦でしかないんだよ・・・結局の所は何も失っちゃいないどころか色々手に入れたあんたらが、あんたらのせいで色々と失った俺に哀れみや情けに叱責を向けられるような事なんか・・・!」
「「「っ!」」」
・・・そこに来て小五郎が絞り出すように口にした静かな怒りを込めた言葉に、工藤家の三人は一斉にハッとして青ざめてしまった・・・小五郎の言葉通り工藤家の面々が失った物など精々が新一が本来高校二年生として過ごす筈だった数ヶ月程の時間くらいで、むしろ得た物の方が多いくらいだ。なのに小五郎は得たものなど分相応とはとても言えない評価に加えて、麻酔に弱った体というくらいだ。そしてそんな状況にしたのが新一であって優作も有希子もその助けになり、全く自分達は悪いことはしてないと思うばかりか小五郎を助けたいと思っていたのだが・・・そんな小五郎にとっての傲慢さが何より耐え難い事なのだと、今更こうして直に怒りに触れることによって理解した為にだ。
「いい加減にしてお父さん!前にも言ったじゃない!新一の事に気付かなかったのはお父さん自身の責任だって!なのに何でそれを分からないの!?」
「「「「っ・・・!」」」」
だがここに来て工藤家側が不利と見てか前のように小五郎が間違っていると言い切った蘭の声に、場の空気が一斉にピリッと張り詰めた物へと変わった・・・明らかに勢いだけで言った新一達への擁護の言葉であり、小五郎の気持ちや考えなど一切考えていない物であってそれに我慢がきくものなのか・・・そういった緊迫感を他の面々が感じた為にだ。









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