いつかを変えることの代償 後編

「・・・とりあえず高遠の件については一応信じることにして話を進めたいと思います。私も毛利さんにお伝えしなければならない事がありますからね」
「・・・俺にも?」
明智はそこで高遠の話題から小五郎に話をと切り出し、当人はどういうことかと眉を寄せる。
「・・・まずは結論から簡単に言わせていただきますが降谷零、毛利さんにとっては安室透の方が馴染み深いでしょうが・・・私は彼と接触し、彼と赤井秀一が私達と同じような立場であるとお聞きしました」
「何っ・・・あいつらまで戻ってたってのか・・・!?」
・・・だが続けられた明智からのまさかの事実の打ち明けに、小五郎は驚愕せざるを得なかった。更に自らの知る二人が逆行していたことを知り。






・・・赤井秀一に関しては小五郎は正直な所、逆行前の記憶ではそこまでの印象はないと言っていい。組織との対決が近くなった時に顔を合わせ、特に長い時間話すような事もなかった為に思うような所など無かった。

しかし降谷零、偽名として使った名前の安室透という人物に関しては違う・・・最初はいかにも人がいい青年として自分という探偵の弟子になりたいと言われ、多少調子に乗っていた事もありその申し出を受け入れた。それが自分を様々な意味で利用するためだと知らず。

ただそれでも別に安室の事を小五郎は嫌いにはなれなかった。元々警察に所属していたから公安という場所がどういった役目を負っているかは承知していたし、安室が自身の事を立てるように動いてくれていた気の使い方は悪くはないと思っていたために。

ただそんな安室とも組織のスパイという立場から離れて公安に戻った後もちょこちょこ交流はあったのだが、新一達の結婚がピークという形で安室との交流は無くなっていった。だからこそその後の安室については小五郎は知らないのだが、まさかこんな形で明智から再びその名を聞くとは思っていなかったのだ。






「・・・ちょっと待て。何でオメーが安室と接触してんだ?オメーと安室は別に知り合いって訳でも無かったんだろ?」
「それはあちらから私に話し掛けてきたんですよ、警視庁内部でね。彼が言うには米花町に足を伸ばした時に毛利さんの事務所が無いことから、毛利さんの行方を探していたそうです。そこで私とこうして食事に行く姿を確認し、私に探りを入れてきたんですよ。安室透ではなく降谷零として、どうにか毛利さんの事を聞き出そうとしてね」
「・・・それでオメーが安室のヤツにカマでもかけたのか?俺の時みたいによ」
「えぇ。と言ってもいきなりバーボンと言ってしまうのは一気に彼が警戒心を引き上げて襲い掛かる可能性も有り得ると感じましたので、単純に私と毛利さんが戻ってきてることを示唆すると目を大きくしていましたよ」
「まぁバーボンはな・・・」
ただふとなんで接触が自分ではないのかといった疑問を浮かべる小五郎に、明智がその時の経緯と共にバーボンと口にしたことに仕方無いといったように漏らす・・・組織内でのコードネームが全く関係無い第三者から口にされたなら、安室が警戒した上で最悪口封じの為の行動を起こすのも当然だろうと。
「それで事実を確認して我々の関係についてを聞いてきた彼に、お互いの状況についてを話し合おうと私は言いました」
「・・・そしてその結果として、赤井秀一も戻ってきてるって分かった訳か・・・」
そんな対面からの話し合いがあった上で事実が明らかになったと聞き、小五郎は複雑そうに漏らす。赤井の名を。









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