苦い思いの乱れる未来

・・・志保が小五郎の元に来た理由は新一達が未だかつてない激怒を受け、それ以降人前に姿を見せない小五郎の様子を見に行くには誰がいいかという事から自分がいいだろうという話になったからだ。新一達はハナから論外になるが、園子に世良に服部に和葉と言った面々は失言しかねない上にほとんど新一達に寄った考え方をしている・・・故に一番妥当でいて安全な人選が志保だったという訳である。小五郎が激昂しないであろう人物は。

そしてそんな話を小五郎はされたのだが、その時は単純に新一達と会うこともそうだが二人を擁護するような言葉をかけられることすら嫌だと考えていた為、志保が来たことは素直にありがたいと感じていた。志保は他の面々と違い、新一達の事を擁護しない為にだ。

しかしそんな志保が元に戻って事情を知る新一達と交流をする時間が削れていることに関してを申し訳無い気持ちになることを小五郎は謝ったが、志保自身大袈裟でも誇張した訳でもなく小五郎への新一達の発言を聞いた事から小五郎があまりにも不憫になった事とと共にいることに関して苦痛になったこともそうだが、何より自分もおじさんの事を考えずにいなかったことからこうなったことを悔いているからせめてもの罪滅ぼしも兼ねてこうしに来ているし、それだけではなくて小五郎に会いたくてここに来たいという気持ちもある・・・と恥ずかしげにしながらも返した。

そんな志保の不器用ながらも想いが詰まった言葉に、ならこれ以上何も言わねーよと視線を背けて小五郎は返したのだが・・・顔が見えなくなる前の一瞬で、そのまなじりに涙が浮かんでいたことに志保は気付いた。事情を知る者達の中で小五郎の側に寄る人物が志保以外にいなく、独りでただ我慢していることがどれほど辛いことか・・・その姿から志保は感じ取ってしまっていた。

その為志保は以降も積極的に小五郎の元に行き、小五郎も志保を歓迎するようになったのだが・・・そういった時間の積み重ねにより、運命の時間が訪れることになったのである・・・






「それでそうして時間が進む中で毛利さんが探偵として活動する状況が良くならない事に毛利さんは業を煮やしていて、志保さんが献身的に側についていた時に・・・感情の昂りのままにそういうことになった、とのことです。流石にその時の事までは生々しくて頼人君も聞いてないとの事ですし、そちらも聞きたくないでしょうからそうなったとだけ聞いたのですが・・・そういったことになったからこそ二人、特に毛利さんはどうするかと事後に考えた上で頼人君の事を思い出したから彼に連絡をしたとのことです。しばらく気持ちを落ち着け、考えをまとめるためにと。そうして頼人君はそれを受け入れ、彼の元に二人は向かったとのことです」
「それは、分かりました・・・ただ毛利さん。質問に答えていただきたいのですが、何故頼人に連絡をしようと考えたのですか?今までの話の流れには全く頼人は出てこなかったと思うのですが・・・」
それで安室がある程度は抑えた表現で頼人の元に行くまでの経緯を話終えるのだが、優作はそこで話を止めて神妙に小五郎に問い掛けを向ける。関係ない筈の頼人に連絡した意味を。









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