いつかを変えることの代償 後編

「よろしいのですか?先程も似たような事を言いましたが、そんなに簡単に私の言うことを信じられて?私が嘘をついているとは感じなかったのですか?」
「・・・そうだとしても、オメーの事は明智の話に今ここで話してるくらいでしか知らねぇんだから、嘘をついてるかどうかなんざ正直分からねぇよ・・・そんな俺が出来ることっつったら、オメーが嘘を言ってるかどうかを疑うよりオメーが犯罪者にならねぇってことを信じて願うくらいだからな・・・」
「・・・クス・・・人がいいのですね、随分と・・・」
高遠はそんな反応に疑わないのかと聞くのだが、首をひねりながらも小五郎が口にした言葉にそっと微笑む。人を疑い探るのが仕事の一般的な探偵にしては、小五郎のお人好しと言って差し支えない人間らしい答えに。
「・・・心配はされなくても構いませんよ。重ね重ね申し上げますが私には犯罪を犯す理由はありませんし、そう言ったように願われれば私としてもその気持ちを簡単に裏切るようなつもりはありませんからね」
「・・・そう言ってくれるなら俺としちゃ構わねぇが、一応明智には今日の事は話はするぞ。あいつが信じるかどうかまでは保証はしねぇけどな」
「構いませんよ、昔の事がありますからその程度は承知の上です。それに起こしてもいないし起こす気もない事をいくら疑われてもどうということもありませんからね」
「・・・そういう図太さがあるように見えねぇんだけどな、オメーのなりからじゃ」
「マジシャンはステージに上がり、多数の人の目を受ける仕事ですからね。好奇であったり期待であったりトリックを暴いてやろうといった挑戦的な目など多数ありますから、その程度のプレッシャーに負けるようでは到底マジシャンになんてなれませんよ」
「・・・ま、確かにマジシャンに限らず人前に出る仕事ならそうもなるか」
高遠はそんな小五郎に改めてそんなことをするつもりはないと多大な自信を覗かせながら答え、その大胆不敵さに半ば呆れたようになる。高遠程ではなくとも図太くなければやってはいけないのだと思い。


















・・・それで以降も高遠とさしあたってトラブルが起きることもなく時間は進み、食事も一通り済んだということで小五郎は高遠と店を出た後で何事もなく別れた。



「・・・つー訳だ。オメーがあいつの事を警戒すんのは分かるが、あいつが簡単に何かをしでかすとは俺は思わねぇぞ」
「・・・そうですか、高遠がそんなことを・・・」
・・・それで後日。明智に食事を切り出し居酒屋に来て高遠との会合の話をし終わった小五郎に対し、明智は考え込むように手を顎に置く。
「それと、大きな舞台でショーをすることになったらチケットを送るから明智警視を誘って見に来てくれだとよ」
「・・・直に会うことを避けるかと思いきや、そんなことも高遠は言ってきたのですか・・・」
「本当にそうする気がねぇからか、簡単に見つかるような事をしないから余裕なのか・・・オメーからすりゃ後者の可能性を疑いたくもなるだろうな。高遠が前世でやってきたことを考えりゃ」
「・・・それは勿論ですが、同時にそんな前にはなかった行動をする高遠だからこそ信じてもよいのではないかという考えも浮かんでいます・・・高遠自身が言ったように今は山神達を殺す理由などありませんし、こう言った時に高遠なら妙に判断をつけにくい言葉を人伝に伝えて私を惑わせるよりは、直接自分はこうしたんだから全容を暴いてみるなり自分を捕まえてみろ・・・と言ったように挑発的な事を言うような人物でしたからね・・・」
「だから嘘じゃねぇ可能性の方も有り得るかもしれねぇって訳か・・・そんな風に言うんだから、本当にそうする気があるってな・・・」
更に高遠からチケットの件についても切り出す小五郎に明智は判断に迷うと以前からの高遠の人物像を口にし、その中身に確かに難しいと言ったように小五郎も漏らす。信じるか信じないかが明智の立場からすればいかに難しいかというように。









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