万人が万人、同じ考えに視点など持ち得ない

「・・・まぁそれはもう構いませんが、一年という約定の時は経ちましたから幻想郷に貴女を戻しますが・・・一応お聞きしますが、幻想郷に戻らずこちらに残るという選択肢はありますか?」
「いいえ、それはありません。確かに幻想郷に入る前と比べて色々と外も変わっていることに珍しさに目新しさは感じましたが、それでも私がいたいと思える場所は幻想郷ですからね」
「フフ・・・そう言ってくださるのでしたら私も嬉しいですわ」
そんな新一達についてから話題を心残りについてに変える紫だが、迷う素振りを全く見せる様子なく戻ると返す射命丸に言葉通り機嫌を良くする・・・幻想郷を誰よりも深く愛する紫だからこそ、どちらも知った射命丸からの返答は何よりも嬉しかった評価の為に。
「・・・さぁ、戻りますわ。やり残したことはありませんわね?」
「はい、大丈夫です!いつでもどうぞ!」
「では、行きますわ・・・」
それでそのままの空気で帰ることについて確認すると射命丸は元気よく笑顔で返し、紫は扇子を取り出し何もない空間に向けてスキマを開く。二人が戻るべき場所である幻想郷に帰るために・・・


















・・・そうして射命丸が幻想郷に戻ったのだが、新一達はそんなことに気付くことも出来ないままに日々を慌ただしくも不本意な形で過ごしていった。自分達の身の回りに起きた事に対して対応することに必死にならざるを得なかった事から、射命丸の事など・・・ましてや御堂筋からこんなことに発展しただなどと、今の新一達が気付ける筈もない。

ただ気付いたとしてもわざわざ文句を言いに行くような気力に余裕はもう新一達にはなかった。二回目を記事にすっぱ抜かれて特集されて以降は流石に派手にでもそうだが、隠れるように動いた所で逆効果になり得るとなった現状を考えれば、現在千葉に住んでいる御堂筋の所にまで行けばどういうことかといったことになるのはまず目に見えている。そこで揉め事を起こせば尚更だ。

故に新一達は何かに気付いたとしても極めて目立たないように生活をするしかないのだが、それで事件に出くわさないように出来るような運回りをしていないのが新一達である・・・以前であれば内心のどこかで嬉々としながら事件の解決をしようと迷うことなく足を運んでいたが、事件が起きる度に人の目を気にしてどうにかしようと内心ビクビクしながら動くのが普通になってしまったのだ。事件に関わったいつかの誰かが記者に自分達の事を悪く言って再び記事になるのではないのかに、もしや今のこの瞬間も誰かが自分の事を良からぬ思いで見ているのではないか・・・と言うように怯える形でだ。

しかしそういった形になったのは、ひとえに今まで新一達の事を御堂筋からヒントを得た射命丸のような視点から見ての記事が書かれることにそんな視点があることについて全く考えていなかったからである。自分達が事件を解決するのは当然であり、誰にも恨まれもしない正義の存在などとうぬぼれる形でだ。

ただ最早新一達はそんなことを言われた所で前ほどとは言わずとも、二度と自信満々に事件に向き合うことなど出来ないだろう・・・自らがよく思われない状況に耐えることなど出来ず、そして推理を楽しむと言うようなことなど出来るはずもなく・・・










END









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