万人が万人、同じ考えに視点など持ち得ない

・・・それからしばらくの間、新一や服部達の周りは騒々しい状態になっているという情報が射命丸の耳に結構な頻度で入ってきた。やはりというか射命丸の記事が大きな影響をもたらし、今までのように新一達を探偵というヒーローとして扱うよりそちらの方がセンセーショナルであり話題になると記者達が見たからであろう。

そしてそんな記者達が新一達の周りや事件関係の人々についてを取材し始めたらしいが、そんな記者達と新一や近しい者達の間でやり合いがされていると射命丸の耳に入ってきた・・・この辺りは新一の親もそうだが、友人という立場にいる鈴木財閥の娘である園子を探ろうとしたことによる物だ。鈴木財閥のスキャンダル関係だったなら話は別だっただろうが、そうでなかった上にやたらと絡んでくる記者を園子や鈴木財閥が鬱陶しがって牽制にかかるのは当然だろうと射命丸は見た。

だが新一と友人関係である園子だが、そんな風に記者に張り付かれた事に加えて射命丸の記事から警戒心を持って鈴木財閥から注意をされたのか・・・日常生活において新一の近くから離れるように生活するようになっていったと情報が入った。

これは事件が起きてその関係者になれば記者に取材をするための大義名分を与える物になりかねないと考えての物だと見た。何もない時にしつこく取材を敢行しても鈴木財閥というバックの存在を考えると利口な選択とは言いがたいが、事件の関係者となったなら記者はその事件の取材という大義名分でガンガン来るだろうから、そんな事になれば園子の性格上失言も有り得ると見て手を打ったのだろう。鈴木財閥のイメージダウンになるようなことを避けるためにと。

ただそんな風に新一はまだ園子を始めとして距離感を図る程度で済まされているが、服部に関しては既に事件に関係することに関してを止められる事態になったことを関西に行った時に知り合った記者から情報を受けた。これは府警の本部長という立場にいる服部の父親の事があるため、変に事件に関わらせること自体を避けての物だというのは察しがついた。新一もそうだが、服部は自分の言いたいことはハッキリ言いたいというタチでありどこで勢いに任せた失言やらをしでかすか分からない性分を見越してと。

・・・こんな話を耳にした射命丸はだろうなというように内心で冷ややかに笑った。自身の書いた記事がこうしたという自覚はあるし最初は考えもしなかったが、それでも新一達に起きたことに関しては視点を変えて見てみればいつでも起こり得る事だったのだ。絶対的であり万人が万人、誰一人も違わず不満を欠片すらも持たない正義など存在しない・・・ということを知る時が来ることは。


















「・・・と言うわけで、もう工藤君達は私もそうですしそう考えるに至った大元は君ではと辿り着けないと思いますから安心していいですよ。彼らは今頃忙しくてそんな暇そもそもないでしょうから」
「それはええんですけど・・・わざわざボクゥらこんなとこに呼んでまでそんなこと話さんでもええと思いますわ・・・」
「いえいえ!御堂筋君のおかげであの記事が書けたんですからこれくらいはさせてくださいと言いましたし、何だかんだで御堂筋君もなら最高級の鰻が食べたいと言ったではありませんか!」
「・・・サカミチィも一緒に最高級鰻が食べれるんやったらええですよ言うたら諦める思うたのに、なんで軽々条件達成しとるんですか・・・」
「あはは・・・」
・・・そうして後日になり、とある東都の高級店の個室にて。
笑顔で経緯を口にしていく射命丸に対する形で座していた制服姿の御堂筋は隠す様子もなく疲れと共に呆れたように手で顔を覆い、その隣に座っていた坂道はひきつったような笑い声を漏らすしかなかった。勝手に自分が行きたくないからと引き合いに出されたこととそれを射命丸がクリアしたこともだが、何より坂道もここまで御堂筋が参っている姿など見たこと無かったために。









.
15/20ページ
スキ