万人が万人、同じ考えに視点など持ち得ない

「この辺りは後ろ暗いことをしていて君達がマスコミを誘引したから迷惑を被ったという人達も取材した人の中にはいましたけど、一般人の中にもそういった人は多々いたんですよ?確かに事件には出くわしたし関係者であったりもしたけれど、それだけで自分の容疑は晴れたのにあの事件に関わっていたんですよね?・・・という風にマスコミに言われたり周囲に好奇の見られて、著しく気分に機嫌を損ねることになったと」
「そ、そんな・・・」
「それなら自分に付きまとわんといてくれと言うたら・・・」
「では聞きますけれど、思い出す限りでいいのでマスコミなんかに話すことはないと強く突っぱねることが出来る人だけしか君達の事件現場にはいませんでしたか?」
「「っ・・・!」」
更に射命丸が笑顔を深めて話を進める中で服部はどうにか返そうとしたが、続けられた問い掛けにたまらず二人ともに息を呑むしかなかった・・・数多の事件に出会ってきた二人だがそれこそ出会う人々の特徴は千差万別であって、中には気が弱かったり強く拒否を返せない人もいたことを思い出し。
「分かりますか?他人は自分ではないんですよ。君達は後ろ暗いことは何もないどころかむしろ誇らしいことをしたと胸を張り言葉を口にすることは自信満々に出来るでしょうが、何もしていないのに多数の人々に張り付かれて何らかの言葉を求められて多大な迷惑を被っている人は確かに存在していた・・・もう一度言いますが、他人は自分ではないんですよ?」
「「っ!」」
・・・その上で射命丸から強調するように優しい口調で二回繰り返された言葉に、二人はまた圧されて身をよじるしかなかった。二人にとってあまりにも痛い正論でしかない言葉であったために。






・・・他人は自分ではない。そう二度繰り返した射命丸だが、これに関しては二人がどのような考え方をしているのかと感じた上で言ったことである。

様々に取材を続ける中で二人がどのような形というか気持ちで事件を解決したのかもそうだが、どのような風な気持ちを現場にいた人々に抱いているのかと言うようなことを射命丸は考えていった。その結果として犯人と悪人以外は皆自分と同類・・・もしくは容疑者になっただけのその他大勢であるといったようなイメージをしていると見た。

これはある意味仕方無いというより、自分と近しい者達以外と事件で会っただけでもう一度会うかどうかすら怪しい者達の事を一々気にかけるなど二人からすれば面倒以外の何物でもないからだ。だからこそ顔や印象は覚えてはいても、その人物達がどういったように考えているのか・・・と言ったことを考えないのだ。

むしろ二人はそんな人物達は事件解決が出来てよかったとだけしか思っていないだろうと考えていないとその時に射命丸は見た・・・確かに厄介な事件が解決したんなら長引くこともそうだが、以降に事件の再捜査と言ったことにならずに済みはする。だがそんな二人の行動により迷惑を被ったのが、先程射命丸が言ったような事だ。

・・・そういったことをしておきながら全く人には何の迷惑をかけていると思っていないどころか、気にかけることすらなく探偵として自信満々に振る舞ってきた。その結果がいかなことになったのかを射命丸は記事にした上で、二人に本質を告げたのだ・・・他人は自分ではないということを、考えも自覚しないままに動いていたのだということを。









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