万人が万人、同じ考えに視点など持ち得ない

「ですがあれはあくまでも私の取材の結果で記事にしたと言うだけでして、貴殿方への嫌がらせと言う訳ではないのですよ?」
「嫌がらせやないやと!?こんな風な記事書かれたら嫌がらせやと思うやろ!」
「そうです!何の恨みがあってこんな記事を・・・!」
ただ射命丸からしたら嫌がらせではないと本心から口にするが、服部が新聞を取り出し机に叩き付けながら怒りを口にして新一もまた同調する。
「落ち着いてください。私からすれば嫌がらせでも恨みでも何でもないんです。ただ少し工藤君の事件に立ち会ったことからこういった記事を作れないかと取材をしてみて、編集長に掛け合ってみたらゴーサインが出たから記事にしたんですよ。そこに二人への悪意なんかないですよ」
「悪意はないなんてよう言うわ!だったらなんで記事が『高校生探偵の光と影』って風に始まるんや!」
「それに中身も中身です!まるで俺達への当て付けみたいに、俺達が解決してきた事件の中で不満を持っている人達への取材だなんて・・・!」
ただそれでも動揺の欠片もない射命丸に二人は尚も怒りの様子を浮かばせ、その記事の中身についてを触れる。こんな自分達が印象が悪くなるような文言と中身の記事を何故出したのだと。
「・・・そう言われるのでしたら逆にお聞きしますが、記事の中身に本当に目を通してからお二人はこちらに来たんですか?」
「「えっ・・・?」」
「私は工藤君の事件に一度だけしか立ち会っていませんが、確かに君の推理は見事な物でしたし服部君の推理も工藤君と同じように見事な物なんでしょう。ですけれど私が記事にしたのはあくまで取材をしてきてその対象から出てきた言葉・・・つまりは嘘偽りのない事実からの物だけです。私の記事が気に入らないと言うのは百歩譲って良しとしても、そんな取材をした方々の言葉までもを嫌がらせ・・・または嘘だと言い、怒ると言うのですか?君達二人のやり方に疑問であったり、首を傾げるような気持ちを抱いたという人達の言葉を全く考えることもなくです」
「「っ・・・!」」
だが射命丸がそこから一転してニッコリとした笑顔と共に記事の中身についてもだが、取材対象の事についても口にしたことに二人は揃って苦い表情を浮かべた。実際の所として射命丸に不快感を抱きはしても、その取材対象からの本音に違いないと言われればどう言っていいか分からないというよう。






・・・そもそもの話として射命丸がどんな記事を書いたのかと言えば、御堂筋の言ったような言葉を参考にした上で新一の事をよく思っていない人々がいると考えたことからだ。確かに新一の推理は見る者から見れば見事で見応えのある一種のショーに見えるかもしれないが、御堂筋のように違った視点・・・言うなれば不快であったり、疑問視するような人もいるのではないかという考えを持っている人も少なからずいるのではないかと。

そういった意味では新一の事件現場に立ち会えた以上に、その場で共にいた御堂筋の言葉を聞いた射命丸にとってはその言葉は天啓のように思えてならなかった。御堂筋の言葉が無かったら射命丸は単純に新一の推理とその解決の場面を写真に納め、記事にすることしか頭になかっただろう・・・確かにスクープと言えばスクープではあるが工藤新一が事件を解決することは最早珍しくもなく、それをそのまま記事にしたところで工藤新一がまた事件を解決した・・・と言ったように工藤新一の功績にまた一つ加わったと、その他大勢の結果の一つになることも考えずだ。

そういった可能性に後で気付いた射命丸からすれば、自身の考えに取材に記事にした物が成功だとネットもそうだが何より新一達が実際に抗議に来た事から確信していた。ただし・・・









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