万人が万人、同じ考えに視点など持ち得ない

「・・・言うてもそんなこと誰かに聞かせるために言うた訳やないんですけど、どんな耳しとるんですか射命丸サァン・・・」
そんな御堂筋は射命丸に対して嫌そうな表情を浮かべる・・・常識がある上にロードレース関係ではない事に加え、ただでさえ事件なんて言う厄介な事態に出会ったことから更に面倒にしたくないと慎重に小さく漏らした言葉を拾われるとは御堂筋は毛ほども思ってなかった為に。
「商売柄耳はよく立てているんですよ。それに工藤君の推理を生で見れて取材も出来ると思って張り切ってたんですけど・・・そうしてた時に御堂筋君のキモッという声が聞こえたおかげで私だけのスクープを産み出せそうですし、何より前々から抱えてた悩みも解決しそうなんですよ!」
「・・・ちょっと下がってください。顔が近いですわ・・・」
「あやや!こんな可愛い文ちゃんの顔が近いんですし、御堂筋君ならお礼も兼ねてもっと近くで見ても構わないんですよ!」
「・・・あんまりグイグイ来られても困るわァ・・・」
対して射命丸が理由を答えつつ満面の笑顔で興奮して距離を詰めてくる様子に、御堂筋は心底面倒そうに身を引かせながら立ち上がる。
「・・・ボクゥがキモッて言うた理由は話しましたし、もう帰ってええですかァ?今日休みや言うても寮の時間あるから、早目に帰りたいんですわ・・・」
「えぇ、十分です!また何かありましたら連絡しますのでありがとうございました!」
「エェ・・・」
それでもう終わらせたいと訳つきで切り出す御堂筋だが、元気よくまた何かあればと返す射命丸にドン引く声をたまらず漏らした。また何かあれば射命丸が自分に接触してくるということに。






・・・そうして御堂筋は自転車に乗り、早々と射命丸の元を後にした。さっさと射命丸の元から離れたいと言う気持ちのままにペダルを漕いでいく形で。
「興味深い人ですね~、御堂筋君。姿形もそうですけど、私の事をあんな風に鬱陶しそうに接する人なんてこっちでは初めてですよ」
そんな御堂筋の後ろ姿を見送った後、射命丸は至って自身が煙たがられていたことを上機嫌そうに受け入れていた。こっちという意味深な言葉も添えて。
「まぁ御堂筋君に関してはともかくてして・・・さ!まずは早速工藤君に関して私が思うような記事を作れるよう掛け合いに行きましょう!」
そんな射命丸は御堂筋から考えを切り替え、足取りも軽く上機嫌なままに自らの勤める新聞社への帰路を辿っていく。その輝くような笑顔に道行く通行人達の目を惹き付けつつ・・・


















・・・それから一週間の時が経ち、部活に精を出して練習を終えた御堂筋は部室で帰り支度を整えた後に携帯を取り出し・・・液晶画面に目を向けるとたまらず顔をしかめ、タメ息を吐いた後に携帯を操作してから真っ直ぐに帰路にはつかず一人で近くの公園に向かった。



『あやや!すみません、お疲れの所に連絡して!』
「・・・どうしたんですかァ、射命丸サァン?何かボクゥに用ですかァ?」
・・・そうして公園のベンチに一人腰をかけて電話を耳に当てた御堂筋が隠す様子もなく表情を歪めながら対応している相手は、対照的に明るく元気な射命丸である。取材があるが何かあった時の為にと言われて一応の電話番号の交換はしていたが、こんな形でまた繋がることになったことを御堂筋は極めて面倒に思いながら。









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