万人が万人、同じ考えに視点など持ち得ない

「・・・で、なんですかァ?サカミチィはいつに終わるか分からへんから来んでええって言うたし、もうボクゥ一人で取材で話せる分は話した筈ですけど・・・」
「いえいえ、そうじゃなくて私が聞きたいのはさっきの事件の事なんですよ!ちょっと今回の事から記事を書きたいんです!だからまた取材を受けてください!」
「・・・エェ・・・」
御堂筋はそんな射命丸に嫌そうな空気を盛大に漂わせつつ対応するが、テンション高く笑顔のままの射命丸に大人相手には礼儀正しくいける御堂筋でも引いた声を漏らす。あまりの熱量の違いに。
「それに、聞きたいんです・・・工藤君を見て御堂筋君がキモッ・・・って口にした理由を」
「っ・・・聞き間違いちゃいますか?それホントにボクゥが言ったんですかァ?」
だが続いた人の悪い笑みを浮かべる射命丸の言葉に、一瞬ひくつきそうになったが御堂筋はとぼけるようにニンマリとわざとらしい笑顔を作り首を傾げる。
「へぇ・・・しらを切るんなら別にいいですよ?この事を工藤君に話しに行きますから」
「・・・ハァ?」
「そう聞いた彼がどう行動すると思いますか?私の見立てだと結構しつこくなると思いますよ~、彼。なんでそんなこと言ったのかって付きまとう形でね♪」
「っ・・・・・・面倒やけど、そんなこと言われた方が面倒そうやからしゃあない・・・ただ記事にする言うてましたけど、せめてボクゥが妙なこと言ったみたいに分かるような感じにせんといて欲しいですわ」
「あやや!受けてくれるんですね!ではそんなに時間を取らせませんから場所を移しましょう!」
「・・・ハァ・・・」
しかし新一へ話をすると言われて御堂筋は苦虫を噛み潰したようになりながらも極めて面倒そうに了承すると、射命丸が笑顔を深めて元気よく先にと促す姿により隠すこともなく深いタメ息を吐いた。






・・・そうして徒歩の射命丸に合わせて自転車を押しながら御堂筋は歩いていき、近くの公園に二人は着いて適当なベンチに並ぶように座る。
「さ、何で御堂筋君が工藤君にキモッって言ったのか話してください!」
そしてそのままに射命丸が手帳とペンを持ち出し、テンション高く目を輝かせて先を促してくる様子に御堂筋は隠しもせずにゲンナリとしながら口を開く。
「・・・単純にキモイと思ったんですわ。殺人事件なんて今まで会ったことはボクゥは無いですけど、人が殺されるいうんがどれだけ大事なんかくらいは分かります。けどあの工藤サァンは事件が起きて終始イキイキしとって、現場で謎が解けた瞬間やろうと思うんですけど笑ったんですわ・・・それが嬉しくて嬉しくてたまらんいう感じにボクゥから見たら感じたんです」
「・・・そんな彼の表情がキモイと、そう感じたんですか」
「そうですゥ・・・別に事件が起きて事件が解決せんでええなんて言うつもりはないですし、冷静になるのは悪いとは言いませんわ。けど話を聞くとあのポアロっちゅう喫茶店は知り合いのいる事務所の真下で、工藤サァンもよく行っとる店で仲良くしとるゆうてましたけど・・・そんな中で必死な様子も見せんと余裕綽々な様子を見せて推理をして、あんな笑みを浮かべるんはこの状況を楽しんどるって考えるとアカンかったんです・・・こいつイカれとるわって感じて、口にしてしもうたんですわ」
「・・・成程・・・」
・・・御堂筋はロードレースでの時の言動に関しては様々に過激な事を言ったりやったりしてはいるが、それはあくまでロードレース内においてのみだ。その見掛けと雰囲気から誤解されがちだが、御堂筋自身は良識という物を良く理解しているし・・・常人より死という物の重みを理解している。
工藤新一がいかに自分の目から見て異常であるかに、キモイという言葉を口にしたのか・・・御堂筋が仕方無さそうながらも自分の中で出てきた事を余すことなく話していく様子に、先程までは笑顔だった射命丸も真剣な様子で聞き入りながら手帳にメモを取っていた。









.
3/20ページ
スキ