万人が万人、同じ考えに視点など持ち得ない
・・・とある自分を探偵と称する一人の少年が、紆余曲折を経て社会の闇に属する巨大な犯罪組織を仲間と共に潰すことに成功した。
その少年は歓喜した。様々に自分の悲願が達成されたこと及び、再び元の生活に大手を振って戻れることに。
そして元の生活に戻り前のように探偵として様々な事件に関わっていき、以前のように有名になり名声を高めていく。
・・・だが自身を探偵と称する少年はまだ知らない。一つの言葉とその言葉を拾い上げた者達により、その評価は一転して急落していくということを・・・
(・・・わざわざ東都まで来て、取材なんか受けんといたらよかったわ・・・)
・・・東都の米花町にあるポアロという喫茶店にて、御堂筋という自転車競技で着るジャージに身を包んだ高校生は心底からうんざりしていた。自転車の競技の一つであるロードレースにおいて一年生にありながら、ダントツの形で優勝をした御堂筋達に取材をしたいからということでその申し出を受けてわざわざ東都まで自転車で来たのだが・・・その待ち合わせ場所であったポアロで殺人事件が発生し、あれよあれよという間に来た警察により容疑者として現場から出るわけにはいかなくなったことに。
(はァ・・・急な用で遅れることになったサカミチィが羨ましいわァ・・・まぁサカミチィここにおったらパニクっとったろうから、おらん方が良かったんやろうけどな)
そしてそんな中で先程警察に頼んで連絡を取った坂道という同級生の存在を思い出し、ここにいない坂道への想いを浮かべる。後半は認めはしないだろうが、坂道への気遣いを滲ませるように。
(・・・にしてもあの工藤新一やったっけ・・・高校生探偵だなんだって騒がれとるけど・・・)
「・・・キモッ・・・」
・・・そんな坂道への考えから目の前で警察に混じり捜査に加わって思案顔をしていた今の自分より一つ年上の人物・・・工藤新一がニヤリと笑みを浮かべた姿に、御堂筋は誰にも聞かれない程度の声量に落としてボソリと呟いた。彼の中では一種の高い評価を向ける時の言葉ではあるのだが、今はただ心からの侮蔑の言葉として。
「っ・・・♪」
・・・そしてその一言が発せられた後、一人の人物がそっと愉快げに口の端を上げていたことは当人以外は誰も見ていなかった・・・
・・・それで少しして新一が事件の謎が解けたと推理ショーが始まり、その推理により事件を起こした犯人は明らかになって御堂筋達は解放されることになった。
「・・・終わった、か・・・ほな、帰ろ・・・」
それで御堂筋は疲れた様子を隠すこともなく店の近くに停めていた自転車に乗ろうとする。
「あやや!少し待ってください御堂筋君!」
「・・・なんですかァ、射命丸サァン?」
しかしその前に御堂筋に取材を申し込んで来たキャスケット帽子を被りスーツを着た女性記者・・・射命丸が慌てたように女性として並のアイドルなど歯牙にかけない魅力溢れる笑顔を見せながら近付いてきて、御堂筋は不機嫌さを滲ませながら見下ろすように答える。細身の高身長であり光のない瞳を浮かばせ、独特の迫力を常に漂わせている御堂筋に普通の女性はまずこれで引くのが普通だが・・・
「ちょっとまだ帰らないでもらっていいですか?お聞きしたいことがあるんですよ♪」
「・・・ハァ・・・」
射命丸は全く怯まず笑顔を保ったまま楽し気に声をかけてきたため、御堂筋は若干呆けたような声で返す。御堂筋の経験上、自身にそんな風に接してきた女性などほとんどというくらいに存在していなかったことから戸惑いも少しありながら。
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その少年は歓喜した。様々に自分の悲願が達成されたこと及び、再び元の生活に大手を振って戻れることに。
そして元の生活に戻り前のように探偵として様々な事件に関わっていき、以前のように有名になり名声を高めていく。
・・・だが自身を探偵と称する少年はまだ知らない。一つの言葉とその言葉を拾い上げた者達により、その評価は一転して急落していくということを・・・
(・・・わざわざ東都まで来て、取材なんか受けんといたらよかったわ・・・)
・・・東都の米花町にあるポアロという喫茶店にて、御堂筋という自転車競技で着るジャージに身を包んだ高校生は心底からうんざりしていた。自転車の競技の一つであるロードレースにおいて一年生にありながら、ダントツの形で優勝をした御堂筋達に取材をしたいからということでその申し出を受けてわざわざ東都まで自転車で来たのだが・・・その待ち合わせ場所であったポアロで殺人事件が発生し、あれよあれよという間に来た警察により容疑者として現場から出るわけにはいかなくなったことに。
(はァ・・・急な用で遅れることになったサカミチィが羨ましいわァ・・・まぁサカミチィここにおったらパニクっとったろうから、おらん方が良かったんやろうけどな)
そしてそんな中で先程警察に頼んで連絡を取った坂道という同級生の存在を思い出し、ここにいない坂道への想いを浮かべる。後半は認めはしないだろうが、坂道への気遣いを滲ませるように。
(・・・にしてもあの工藤新一やったっけ・・・高校生探偵だなんだって騒がれとるけど・・・)
「・・・キモッ・・・」
・・・そんな坂道への考えから目の前で警察に混じり捜査に加わって思案顔をしていた今の自分より一つ年上の人物・・・工藤新一がニヤリと笑みを浮かべた姿に、御堂筋は誰にも聞かれない程度の声量に落としてボソリと呟いた。彼の中では一種の高い評価を向ける時の言葉ではあるのだが、今はただ心からの侮蔑の言葉として。
「っ・・・♪」
・・・そしてその一言が発せられた後、一人の人物がそっと愉快げに口の端を上げていたことは当人以外は誰も見ていなかった・・・
・・・それで少しして新一が事件の謎が解けたと推理ショーが始まり、その推理により事件を起こした犯人は明らかになって御堂筋達は解放されることになった。
「・・・終わった、か・・・ほな、帰ろ・・・」
それで御堂筋は疲れた様子を隠すこともなく店の近くに停めていた自転車に乗ろうとする。
「あやや!少し待ってください御堂筋君!」
「・・・なんですかァ、射命丸サァン?」
しかしその前に御堂筋に取材を申し込んで来たキャスケット帽子を被りスーツを着た女性記者・・・射命丸が慌てたように女性として並のアイドルなど歯牙にかけない魅力溢れる笑顔を見せながら近付いてきて、御堂筋は不機嫌さを滲ませながら見下ろすように答える。細身の高身長であり光のない瞳を浮かばせ、独特の迫力を常に漂わせている御堂筋に普通の女性はまずこれで引くのが普通だが・・・
「ちょっとまだ帰らないでもらっていいですか?お聞きしたいことがあるんですよ♪」
「・・・ハァ・・・」
射命丸は全く怯まず笑顔を保ったまま楽し気に声をかけてきたため、御堂筋は若干呆けたような声で返す。御堂筋の経験上、自身にそんな風に接してきた女性などほとんどというくらいに存在していなかったことから戸惑いも少しありながら。
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