真実は一つ・・・と言うが・・・

「あっ、鬼灯様に毛利のおじさん」
「ご飯?」
「おっ、一子に二子か。そうだよ、今日は鬼灯様の世話になったからお礼してるんだ」
「「そうなんだ~」」
そんな二人の会話の中で唐突に現れた二人の共通して着物を着ていて片方が黒髪で片方が金髪の女の子達に、小五郎は笑顔で返す・・・この二人の女の子は座敷わらしという妖怪で、鬼灯が現世から連れ帰ってきた二人である。この二人は生きてきた年齢こそは小五郎より遥かに上ではあるが、座敷わらしという妖怪はその性質上大人にならずにずっと子どもの姿と性質のままの為、蘭という女の子を育ててきた小五郎からすればこの二人は大人目線から可愛がる対象であり、座敷わらし達もそんな小五郎によくなつくようになっていた。
「お礼って、あの工藤って人のこと?」
「今日ここに来たんだ」
「あぁ、そうだけど・・・そういやお前らは新一のことあんまり好きじゃなかったんだったっけか」
「うん。頑張る人は好きだけど、話を聞いてるとその人仕事を頑張るんじゃなく楽しんでるってだけって思ったの」
「そして事務所の人達の事を考えてないって聞いて、どうしようもないなって」
「もし地獄に来る前に彼の探偵事務所に行っていたら、貴女達はどう思っていたでしょうか?」
「探偵事務所を見ても居着かなかったと思う」
「うん。私達頑張る人は好きだけど、楽しむだけの人に不満を持ちながら働いてる人しかいない所なんて最初からいたくないもん」
「そういうシビアな所は変わりませんね、ずっと」
「はは・・・」
そんな二人は交互に新一の事かと聞いてきた為、小五郎もだが鬼灯も興味深そうに話に入る。ただ中身が明らかに辛辣以外の何物でもない二人の返しに、鬼灯は感心した声を上げて小五郎は苦笑するしかなかった。






・・・座敷わらしがいる家や仕事場は繁栄するといった伝承があるが、それは確かであると同時に見切りをつけられると即座に没落するという面も兼ね備わっている。これは座敷わらしが頑張っている人が好きでその人達が頑張っている間はそこに留まり福を招く性質があるのだが、その頑張りが無くなったなら座敷わらしはそこにいたいという気持ちがなくなり元々あった福共々まとめて退散するからである。

その点で座敷わらしからすれば新一は事務所の代表で働き頭の人間としては、魅力の全くない人物だった。事件が起きればまともに解決しようと向き合うようにはしてはいるが、その根本にあるのは真摯に仕事に向き合うという気持ちではなく謎や事件に向き合えて楽しいという気持ちだ。そんな真面目とは到底言い難い新一を座敷わらしが気に入る筈もない。

その上で事務所の人間もすぐに辞めたり仕事を変えたりとしていって、結局は新一が探偵稼業を体や歳の都合から辞めるまでは不満を持ちながら取っ替え引っ替えと人が変わる形で運営されてきた・・・こんな状態では座敷わらしが事務所にいたくないと思えるのは当然だろう。

・・・座敷わらしが来ていたなら探偵事務所はすぐに終わりを告げていただろうが、そうならなかったが為に探偵事務所は存続出来たどころか次々仕事が舞い込んできた。こう考えると皮肉以外の何物でもないだろう、座敷わらしが来ない方が仕事としては成功していたというのは・・・









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