真実は一つ・・・と言うが・・・

懸衣翁の役割については話すと長くなるのでどういった問題点があるのかと言うと、仕事があるのにほとんど仕事をしないばかりか給料を上げろと文句ばかりを垂れて上司という立場の鬼灯にも開き直るどころか最初から全く悪びれもしない・・・という部分である。

懸衣翁のこの態度は会社の人間だとしたら、普通なら解雇になっても当然の代物である。だがそうされないのは全く仕事をしないのではなくギリギリ本当の最低限・・・もうこの役目はやらないなら伝承に残さなくていいからもういらないだろうと言われない程度には仕事をしていることや、懸衣翁以外に代えがきかない仕事な上に跡取りを育てようとすらしないものだから替えを作ることも出来ずにきていて、その上で地獄の中でも本当に古株の存在であり意見は出来ても言うことを聞かないで周りもどうすることも出来ない・・・という最悪な状態を作り上げているのである。辞めさせるには色々と問題があり、そう強行することも出来ない状態を。

こんな状態を作り上げ平然とサボる懸衣翁に関して、鬼灯ですらもう怒りや苛立ちを浮かべて色々言うだけで済ませるしかないのだ。もう何を言っても無駄でしかないと分かっているから、それくらいの言い分はぶつけてもいいだろうというように言うしか。

そして懸衣翁だけでなく数多の似たような人の言うことを聞かない亡者達を見てきた上で、新一もそれらの人物達と大して変わりはないと見たのだ。いくら朱に交わらせようとしたところで黒は黒にしかならず、もう変わりようのない人物だと。

・・・ただそもそもを言うなら地獄が人手不足なのは亡者の数が増えたのもあるが、質より量だという考えから懸衣翁レベルまではいかなくとも使えないだったり働かない者という可能性を踏まえてまでスカウトするわけにはいかない現状があるからだ。

ならなんでそうなるのかと言えば、獄卒として働いて欲しいと願うということは地獄には行くにせよ極楽に行くにせよ、転生をして生まれ変われる権利を捨ててほしいと切り出すものなのだ。地獄での刑罰を受けた後は転生がちゃんと出来るからこそ、この獄卒としてのスカウトは地獄行き極楽行きどちらの人間でも素質ありと見れば行える。

だがそうしてスカウトした人物が働かないとなったら、はいじゃあ地獄行きだとか獄卒を辞めさせ改めて罪に問うということは体面上出来ない・・・何故なら誘った上で選ぶようにしたのは地獄側からであり、それを選んだ人物を軽々辞めさせるなどしたなら最初からスカウトなんかするなという話になるためだ。

勿論鬼灯を始めとしてそんな人物が出たなら即行で修正に入るだろうが、それでも従わない人がいるならスカウトした側の責任が問われる話になる。その上で働かない獄卒に関しては迎え入れたのはお前らなんだから、辞めさせるのは色々と手続きやら問題があるのだからそんなことをしないようにしろと言われるのもまた目に見えていた。

そんなことになることなど鬼灯からして絶対に避けたいことであったからこそ、量より質という形でちゃんと獄卒として働いてくれるであろう人物かどうかを見越してスカウトに乗り出しているのだ。ちゃんと働かないのもそうだが地獄の刑罰が嫌だから獄卒になり、ろくに働かないだったり問題行動を引き起こす人物を引き入れてもマイナスな効果しか見込めないために。









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