真実は一つ・・・と言うが・・・

・・・そう、新一が地獄だったり獄卒に馴染むような可能性を全く鬼灯が感じなかったからである。今まであらゆる死者達を見てきたからこそ新一は獄卒向きではないと見たのだ。ならどうしてそうなるのかと言えばいくつか理由はあるが、まとめて言うなら会社の歯車になれるタイプではないからである。

地獄を運営する団体を会社と例えるなら閻魔大王を社長で鬼灯以下の面々が社員という立場になるが、基本的に地獄でやることはそれこそ現世に伝わるような地獄の刑罰を地獄行きの亡者達に与えるという現世には有り得ない仕事をしはするものの、基本的にその中身にさえ目を瞑れば下手な現世の会社よりホワイトでいて理不尽な要求を求められない上に有給申請も普通に通る職場である。今の人間社会なら働く中身さえ別に気にしなければ普通にいい会社になるが、あくまでそれは会社の一員になるという意味でだ。

その点で言うと新一は探偵事務所の代表という身分にあったが、裁判の中で明らかになった中身を考えてみれば分かるだろう・・・基本的になどというレベルではなく新一が人の上に立てるような人物ではないこともそうだが、同様にそれだけ我の強い部分を持つ新一が人の下に立てるような人物ではないことも。

その上で基本的に生きている間は自分のやりたいことをやれるようにやってきた新一は会社勤めという物をそもそも経験しておらず、そう言った場での人間関係の構築の仕方は知識だけで全く経験がない上に、基本的に仕事は中身はともかくとしてルーチンワークに近いことを毎日やることを求められるのだ。

それに地獄では探偵をしていた時のような事件が起きて、推理を求められるようなことは起きることはない・・・基本的に地獄で事件が起きる時は地獄からの脱走だとか集団抗議などが精々であり、大がかりなトリックを用いた殺人事件などもう死んでいて罰を与え続けられている亡者が同じ亡者に実行する理由など色々な意味でないし、大規模なテロを計画したとしても鬼灯を始めとして正しく人外の面々が揃っていて、例え人類最強レベルの人間を押し並べた所でまず勝ち目などないのだ・・・つまり探偵として新一が仕事を出来るような環境など地獄にはないのである。その持ち前の頭の良さ、いや推理力を発揮出来る場は。

・・・これらをまとめると新一が獄卒としての仕事でルーチンワークに従事し、推理や事件に一切関わることのない状態で小五郎を含めた周りの獄卒といい関係を作れるかと考えれば・・・鬼灯の経験上、まず有り得ないだろうという結論が出た。それも迷う必要などなく、即断でだ。

おそらくなどという言葉など使う事もなく、間違いなく新一はそんな仕事に関して根を上げるようになるのは目に見える。それも半年持てばいい方で、早ければ一ヶ月も持たないだろう・・・依頼でどこかに行くことが普通で探偵事務所という拠点ですら依頼の数の多さから一週間に半日いればいいレベルで外に行っていた新一は、実の所として書類整理だとかの単純作業の類いには慣れてはいない。

ただ能力こそはあって書類の整理自体は出来るが、その性格であったり性質が長時間のルーチンワークに向いていないのである。大して好きでもない事を無心で長時間やるなど、謎に対して頭を動かすことが何よりの楽しみである新一からすれば苦痛で仕方無いだろう。

とは言え能力に関しては一応あることはあるし、鬼灯なら小五郎の言ったように使えるようになるなら血の池にぶちこむくらいはするだろう。比喩のような形だけではなく、実際に実行する形でだ。しかしそれをやらない理由はどこまで行っても変わらない者など普通に存在すると鬼灯が既に知っているからである。ならその存在は誰なのかと言えば、懸衣翁と呼ばれる鬼灯よりも昔から地獄で活動している古株のことである。









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