真実は一つ・・・と言うが・・・

「それはいいんですが、後悔はしていないんですか?彼に直接話というか、鉄拳制裁をしなかったことに」
「いや、あいつの性格を考えると俺が顔を見せた時点でめんどくさくなるって言ったのは鬼灯様じゃないですか。そしてそう聞いて俺もそうなるって思ったからあいつに会うのも殴るのも止めたんですよ」
「そうしてくれてこちらとしてもありがたかったのは否定しませんよ。もしそうしていたら今もまだどうにか自分も獄卒にしてくれ、罪滅ぼしをさせてくれと言っていたでしょうからね」
「鬼灯様は獄卒になりたいなんて言われても絶対に受け入れる気はないって言いましたし、俺もすがりつかれたくなかったんですよ。獄卒になれば俺に対しての罪滅ぼしが出来るなんて思われるのもそうですし、時間が経ったら俺が新一の事を許したなんて風に思われたりして気楽に接されるのは・・・」
鬼灯がそこで新一と直接対峙をしなくて良かったのかと改めて聞くのだが、小五郎は分かっているでしょうというように話を進めた上で疲れたよう目を閉じる。もしもの時の新一との可能性についてを考え。






・・・そう、新一のザマを見届けるために獄卒になったのに何故新一に直に会わなかったのは様々な理由があったからだ。その代表的な理由として、新一がどうにか挽回の機会をと獄卒に自分もなりたいと願い出るような事態になるのを避けるためである。

もし小五郎が先程の場に来たとしたなら新一は何故と獄卒の制度について聞くか、こういう時にはやけに回る頭で十中八九などという確率ではなく確実に気付く事だろう。死んだ人間が地獄で働けるシステムがあり、小五郎がそれで働いているのだと。

そしてそれを知った新一が言い出すのはおっちゃんについては悪かったとは思っているから、だからどうにか挽回の機会が欲しいと獄卒へと志願する言葉だろう。

だが小五郎からすればそんな申し出など全く望む物ではなかった。もう新一については自分を殺して罪から目を背けた時点で愛想に関しては尽きていたし、時折現世の事を浄玻璃の鏡だったり現世に変装していく鬼灯達からの話でより強く一緒に獄卒として働きたくないと思うようになった。主に蘭と結婚して全く気に病んだような様子を見せないままに幸せそうな様子だったと見て、聞いたからだ。

そして鬼灯としても新一を獄卒として受け入れるつもりが一切なかったため、誘うどころか獄卒の制度についてを一言も言うようなことはなかったのだが・・・人手不足の中で人をスカウトすることに余念のない鬼灯が新一をみすみす誘わなかった理由は小五郎の気持ちを考えたからだけではない。使える物はいくらでも使うようにするのが鬼灯であるし、見込みがある者にスカウトに応じる可能性がある者にはスカウトに余念のない鬼灯だが・・・






「まぁそもそもとして彼が地獄でうまく活動など出来ないのは明白でしたからね。色々と理由はあれども彼が地獄に馴染むことなど時間をかけてもなかったでしょう。朱に交われば赤くなると言いますが、黒は何をやっても他の色になど染まらず黒のままですからね」
「・・・朱に交わらせるどころか血の池にぶち込んで血塗れにすることに躊躇しない鬼灯様がそこまで言うっていうのが、なんというかという気持ちにさせられますね・・・」
「誉めていただいて恐縮ではありますが、本当にそれくらいのタマだったんですよ。能力自体は惜しくとも、あの工藤新一という人物は」
そして鬼灯もまたこれで良かったのだと言うよう苦笑いになった小五郎の言葉に軽く返しつつ口にする。新一が地獄に馴染む筈など有り得る筈がなかったと。









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