真実は一つ・・・と言うが・・・

「それよりどうでしたか?少しは溜飲は下がりましたか?」
「その話は後にしましょう。あんまり遅くなると食堂が閉まりますんで、話の続きは食堂でってことで。それと今日は世話になりました分、私が奢らせていただきます」
「あぁ、こっちはいいよ。仕事が終わったら早く戻って来てほしいって言われてるから、鬼灯君と二人で行ってくれればいいからさ」
「だそうですから行きましょうか」
それで軽く会話を交わしていき閻魔が二人で食事に行くよう朗らかな顔で断って手を振る様子に、鬼灯もすぐに頷いてから小五郎と共に食堂に向かう。






・・・そうして向かった食堂にて人もまばらな状況の中、一つのテーブルに対面式で料理の乗ったお盆を置いて向き合う形で二人は座る。
「さて、改めてお気持ちはどうでしたか?自分を殺した男が裁かれていった様子は」
「・・・まぁ溜飲は下がりはしました。ようやく俺を殺したんだって認識してくれたってことには・・・ですがやっぱりあいつがあのまま生きてきたってとこを見て感じた事に関しては、やっぱり残念だって気持ちをどうにも消すことが出来なかったですね・・・」
「彼の性格に考え方、そして今まで生きてきた経験がそれらを邪魔していたのは明白です。成功を重ねてきた人間ほど自身の過ちを過ちと認めない傾向が強く、その上で運やら実力が高いものだから罪を闇に葬り去ることが出来るような機会にも自然と恵まれる・・・まぁそれが通じるのはあくまで現世までなんですけどね」
「それはよく知ってますよ・・・鬼灯様にこうして獄卒にならないかと誘われてから数十年・・・時々裁判の様子は仕事で見てきましたからね」
そうして二人は会話を始める。新一の裁判の事もそうだが、小五郎に鬼灯が誘いをかけたということを。






・・・そもそもこうして小五郎が普通に地獄で活動しているのは、小五郎が言ったように鬼灯から地獄の運営に携わる獄卒として働かないかと誘い掛けられてそれを了承したからだ。

ただ最初地獄に来て裁判にかけられた上で獄卒として働かないかと誘われた時には小五郎もどういうことかと驚愕したが、現在の地獄は人手不足であることからちゃんと働いてくれる人材が欲しいからスカウトをしたいとストレートに鬼灯は誘いをかけてきた・・・その上でスカウトを受けてくれるなら、工藤新一や気になる人物が死んだなら裁判を見れる権利を与えると言う形でだ。

その悪魔の誘惑ならぬ鬼の勧誘に、小五郎は少し考えた後に了承することにした。獄卒として活動することになればいつ終わることになるかも分からない獄卒としての暮らしに明け暮れることになり、転生して新たな命として生まれ変わることが出来なくなるというデメリットを承知の上でだ。

一応酒と女と賭博という人間失格の烙印を押されても仕方無い組み合わせの物が生きている間は大好きだった小五郎だが、それでも家族である蘭に貧困という物を味合わせたり酒に酔って暴力沙汰を起こしたこともなく、女好きではあって鼻を伸ばすことはあれども不貞行為自体は行ったことなどなく、目立った罪もなく極楽行きの裁定を下された上でだ。

・・・なら何故そこまでして獄卒になることを選択したのかと言えば、新一への怒りが勝ったからだ。自分を散々利用してきて殺してしまったのに、いざそうなった時には今まで自分が捕まえてきた犯人達と同じ・・・いや、それ以下の事をあっさり選択して罪に自身を殺したことから目を背けた。そんな存在を事情があったから仕方無いなどと簡単に許せるような気には小五郎はなれなかったためにだ。

そうして獄卒になった小五郎は数十年の時間を地獄で過ごし、先程の裁判の様子を隠れる形で見ていたわけであるが・・・









.
14/23ページ
スキ