真実は一つ・・・と言うが・・・

・・・元々阿笠も小五郎を利用というか、新一が組織に近付く為のちょうどいい探偵という立ち位置にいたのがあったから、そちらにいた方がやりやすいと考えそうするようにと新一に言った。だがそれでも元々阿笠は小五郎を犠牲にするつもりは全く無かったし、麻酔がそこまで効くとも体に残り続けるとも思っていなかった・・・だが、それは間違いであった。

そもそもは新一が『江戸川コナン』時代に事件に出会う頻度や密度の濃さがあまりにも桁違いに多かったのが理由である。工藤新一として元に戻ってからも数多の事件に出会ってはいったが、『江戸川コナン』時代はそれこそ数ヶ月程しかないのにそれ以降とも以前とも比べるまでもない程の密度の事件が起きていたのだ。数ヶ月しかないのにそれ以上の年月が経っているかのよう、それでいて季節の移り変わりを繰り返しているような状態でである。

そんな妙な状態に関してはともかくとしても、その事件の数と密度を考えるなら体から抜けきることのない内に更にまた麻酔を撃ち込むのはそれこそ危険な事だ。だがそういったように短期間になることなど、本来なら有り得ない事であったし阿笠自身もそうなることなど考えてもいなかったろう・・・最大の不幸はやはり、新一が異常に事件を呼び込みやすいという性質があったことだ。

そうして活動してきた新一により小五郎が死ぬという事態になったことは阿笠にとって予想外であると同時に衝撃であったが、その為の償いが出来ないようにさせられたばかりか新一がそこに一も二もなく頷いて以降は小五郎のことは気にしない・・・と言った姿を見たことが更なる衝撃であると同時に阿笠の心を深く傷付けてしまったのだ。

・・・確かに組織の壊滅により新一を始めとして薬を飲んで体が小さくなった面々は元に戻れたが、最早阿笠は新一と関わるつもりになれなかった。組織を壊滅させて体を戻らせた以上は協力する理由もなくなった上、全く自身に影を落とすような様子が新一には見えない姿を見たためにだ。

その為、小五郎が表向きは突然の病死ということで処理されて葬式を終わらせた後阿笠は家にこもり、自分の家に住んでいる志保以外は新一を含めて極力関わらないようにした。そして志保も阿笠の気持ちや考えを理解し、そうなるようにと動いていった・・・志保自身小五郎を殺してしまった事実を新一が否定する姿に、不信感を感じてしまった為に。

ただそうして新一達を遠ざけながら生活したものの阿笠は次第に体の調子を崩していったために、志保に家や財産を譲るかわりに自分の後始末をしてくれと頼み・・・そのまま還らぬ人となった。

それで新一は阿笠の死に嘆き悲しむような姿を浮かべてはいたが、そういった新一の姿を見て志保は内心で心が冷えていくのを隠しつつも葬儀を終わらせた後に阿笠邸を売り払うことと遠い場所に引っ越すことを明かした後、一月もしない内に志保は全ての整理を終えた後に阿笠邸を後にしていってもう新一達と顔を合わせるようなことは無くなった・・・阿笠や自身の感じたことを新一に明かしても理解はされないということを良く理解した上で、もう自分も新一達と関わりたくないという気持ちを志保が強く浮かばせた為にだ。

そんな志保の気持ちが理解出来ない新一は時折戻ってこないかと連絡をしたりしたのだが、そこはもう志保はキッパリとそうしないと返したことで次第に志保に連絡することは無くなったのだが・・・今鬼灯に阿笠の事を言われたような形でなければ、新一は志保がそうした理由というものに辿り着けない事だろう。自分がやったことは悪いことなど一つもないと思っていて、悪意や良くない感情や考えを自身に向けられている事など考えない人物な為に・・・









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