真実は一つ・・・と言うが・・・

「この辺りは貴方が色々と頭がいい割に抜けてたのもありますが、辞めていった人達が貴方の性質や能力を知っていたから下手に力ずくで貴方に働きかけないようにした方がいいと考えた上で、耳障りのいい理由という名の言い訳を用意していたことから貴方は疑わなかったんですがね。自分が理由だからこういった事を言い出して辞める事にしたんだと」
「っ!・・・じゃあ、嘘だったんですかその理由は・・・!?」
「全てが全て嘘だという訳ではありません。と言っても貴方の元から離れると共に新たな職に資格に婚活といった公然と離職するには不自然ではない理由を目標にして動き、実際にそうすることで貴方への不満を押し隠したまま貴方の元を離れた・・・というわけです」
「っ・・・!」
更にそこで離れていった人々がどういったように離れたかの経緯と理由も話すと、新一はたまらず顔を泣きそうにしながらひきつらせてしまった・・・そこまでしてでも離れたいと思わせてしまったこともそうだが、そういった気持ちを見抜くことも考えることも出来なかった人物達が多々いたということを前にして。
「あの~、鬼灯君・・・そろそろ本題に移らないかい?一応判決の為の前置きにはなってはいるけど、先に本題についてを話さないと今のまま進んだなら彼がまいって色々と話が進まなくなってしまいそうだよ」
「・・・そうですね、そうしましょうか」
そんな光景を見て止めに入ると言うよりはやんわりと先を促すように黙って見ていた閻魔大王の声に、視線を向けて頷いた後に鬼灯は手元の巻物に視線を向ける。
「・・・今貴方の行動についてをブラック企業と例えましたが、公務員だったり交代制のない一般的な企業と違い探偵業には定時はいつになるだとかそういった決まりはそこまではありませんし、何より貴方自身は時間も場所も関係なく事件や依頼に対してうんざりすることもなく様々に数をこなして取り掛かってきました。これだけならまだブラック企業紛いな事をしていても解決してきた事件の数に貴方自身の人格もあって、まだ地獄行きかどうかを決めるのに時間がかかったでしょうが・・・」



「貴方に関しては毛利小五郎さんを散々利用した上で死なせてしまった罪がありますので、これなら地獄行きは確定していますね」



「っ!?」
・・・そんな鬼灯が巻物から目を離さずに口にした言葉に、新一は今回最もに驚いて目を見開いた。英理の夫であって、義理の父親という立場にいた小五郎だが・・・
「自分が殺したんじゃない、あの組織が毛利さんを殺したんだ・・・貴方はそう言いたいのかもしれませんが、死因はれっきとした麻酔の中毒死であり貴方以外に毛利さんに麻酔を打ってきた人はあの組織の中にもいません。なのに貴方はその時に組織の人間がやったんだとひたすらに認めようとしなかったばかりか、原因はどうあれ毛利さんの死が間接的に組織と関係していることから事故死にして片付ける方がいいとなったことに乗っかった・・・自分が毛利さんを殺したことを認められないのは一先ず置いておくにしても、都合があるからとは言えその死を偽装した事に賛同した事は許される物ではありません。例え一般には組織の事は表に出すべきではないことや出したら出したで社会が混乱するからなどという理由があったところで、然るべき形で葬られるべき人の死を偽装するのはあくまでもそれらに関わり生きている者達の都合でしかなく・・・この地獄はそんな言い訳は通用しないということです!」
「っ!」
・・・そう、新一自身は決して認めることはしないが偶然という形ででも殺してしまった存在である。
だが地獄では現世の都合やら関わってきた者達の事、ましてや新一の心情などおもんばかる事などない・・・そう最後に威圧感を滲ませた睨みを向ける鬼灯に、新一は体をビクリと震わせた。小五郎の事で目を背けていた事はもう今ここでは目を背けられないのだと理解させられて。









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