真実は一つ・・・と言うが・・・

「今更になって思い出したといったようですが、そもそもの話として働いた分に対して正当な報酬を得たいと思うのは当然の権利です。ただ貴方は自分の探偵としての活動と報酬に別段不満を持っていなかったのでしょうが、その仕事量もさることながらそういった割増料金分の報酬が得られないということはそれだけの分の給料が得られないのと同義です・・・それを自分がこう思っているんだから正当な報酬を払うようなことをしないでもいいなどと思うのは、ブラック企業と大して変わりないやり方ですよ」
「ブ、ブラック企業!?」
「こうして亡者の裁判をこなしているとブラック企業の方々とも会うことは珍しくありません。使い潰される立場の方々もそうですが、使い潰して来た方々も勿論来て裁判にかけると揃って本気で自分達がブラックであることなど大抵の方々は微塵も疑っていないんです。あれくらい普通だし、会社の為に身命を削るのは当然どころかうちで働けたのだからむしろ光栄だろうと・・・貴方は自分はそんな人達とは違うと思うかもしれませんが、自分と一緒に正義を為している上であくまで体裁の為に行動をしているだけであり、全くスタッフは不満を持っていない・・・そういった風に信じて疑わず、正当な報酬を得られて支払われないという状態を作り出した貴方はブラック企業の社長と言っても過言ではないんですよ。例え貴方にその気はなかろうとです・・・そしてそんな貴方を見限る形でスタッフは妃さんに報告をしていった上でよく辞めていき、妃さんも妃さんで何度かそう言ったことがあったから貴方に見切りをつけて人を紹介しなくなって疎遠になっていったんですよ。義理の親子になったのにです」
「っ!?」
淡々と、そして新一を思いやるような様子など一切見せる事などなく・・・いかに新一とスタッフや英理達との間に意識に格差があったかやブラック企業の社長と言い切る鬼灯に、新一はまた衝撃を受けるしかなかった。その気はなかった・・・そう言う事はいくらでも出来るが、言葉にされた事実はその気はなかったで済まされるような物ではない事実が多々出てきた上に、知りたくなかった事実まで追加されて出てきた為に。






・・・新一がそのように金儲けやスタッフへの配慮を自分の中の基準で大丈夫だと判断したことから、スタッフがやる気を無くすのも当然と言えた。金の問題もそうであるが鬼灯はあまり深く掘り下げていないが、新一の担当する依頼は事件に発展しやすかった事以上に何より数が多かったのだ。地方に出張して数日留守にするようなことも多々あったりはするが、それでも近場での依頼となれば一日と経たずに依頼を解決するからこそ次の依頼へ取り掛かるスピードもあった為に・・・そこで事件がかなりの高確率で起きることはともかくとしてだ。

ともあれそういった依頼の数々について気持ちを高く保ったまま事後処理をするのは、かなり難しい作業である。現に向いていないとは言え、蘭もそういった作業に関してギブアップと根を上げたのだ。こんな作業を数をこなしていくのは無理があると。

そんな作業に関して依頼や事件を解決して正義感や謎を暴けた事に満足感や達成感を得られる新一に対し、事件に直接関わる事もなく時間もかかる上に働いて得られる筈だった給料も想定された物より少なく改善に取り組むことはない・・・そんな状態でここで働いてほしいと紹介されただけの人間が代表と志を共にした上で生活の基盤であったり労働の対価である給料が少ないとなって、不平不満をずっと我慢し続けられるか?・・・その答えが、事務所を辞めるという物である。

まぁそれでも英理は一応というか、そういった人達の気持ちは理解した上で義理の息子ということから新一に何度か注意をした上で新たなスタッフを紹介したりした・・・だが結局は新一は英理の言うことなど聞いたりはせず、スタッフも辞めたいと切り出すのが後を絶たなかった為に英理は新一に仕事面で関わる事を止めることにした。義理の息子としては悪い人物ではないが、もう仕事関連でこちらの言うことを聞く筈がないからと。









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