真実は一つ・・・と言うが・・・

「さて、まずは名前を確認しますが工藤新一さんでよろしいですね?」
「はい」
「貴方の名前に関してはよく亡者の方々から聞いていましたよ。主に貴方が出会った事件の犯人達からですけれどね」
「は、はぁ・・・」
そんな鬼灯からまずはと手元の巻物を見ながら話を始めるが、その中身に新一は曖昧な声を漏らすしかなかった。新一は数えるのが億劫になるほどに事件と関わってきて、どの事件の誰なのかなど心当たりが多すぎた為に。
「資料を見る限り事件の詳細やら犯人やらを読み上げるだけでも相当に時間がかかるのは見て分かりますのでその辺りは省略しますが、貴方が数多の事件の解決に貢献してきたことは確かなようですね」
「まぁそれは・・・」
ただ続いた鬼灯の淡々とした言葉に、少し新一は気恥ずかしそうながらも否定を返さなかった。新一からすれば誇りに謙遜こそすれど、否定することも卑下するような物でもなかった為に。
「ですが探偵としての実力はともかく、事務所の代表としては様々な点から見ていただけないようですね。かつて在籍されていた方々からだったり貴方の義母であった妃英理さんやその関係者から様々な不評がありましたよ」
「えっ・・・不評・・・!?」
だが続けて出てきた不評との言葉に新一は驚き、たまらず目を丸くする。
「・・・元々貴方は最初は自分と妻である蘭さんとで探偵事務所を切り盛りしようとしていたとありますが、貴方の探偵活動が起動に乗っていくにつれて、主に外で働く貴方と違い事務所の中での作業に四苦八苦していた蘭さんの為にと人を雇い入れたのでしょう?・・・そしてその方々の大半が長くても三年程度で様々な理由で辞めたり、転職したりしたでしょう?それは本当にそうしたいと思った以上に、実は貴方の元を離れたいと思ったからその方々は理由付けをして当たり障りなく辞めていったんですよ。その実は貴方に怪しまれないようにするためにね」
「なっ・・・!?」
そして鬼灯が口にしたその続きとまさかの事実に新一は絶句せざるを得なかった。いきなり聞くにはあまりにもヘビーと言うか、雇っていた人達だったりが自身に不満を持っていたと話されたことに。






・・・鬼灯が言った人を雇い入れた事に関しては、蘭が事務所での仕事に限界だと根をあげたからだ。元々から蘭はあまり頭脳労働が得意と言える部類にはなかったこともあるが、新一が依頼をされてそれを解決してはまた次の依頼の解決をと言ったように間を空けずに依頼に向かうような事が多く、事務処理であったり来客や電話対応だったりいつになれば新一はスケジュールは空くのかといった確認・・・そういった諸々を別に探偵になりたいと思っていなかった上に、地味でいて面倒な作業を蘭がずっと一人で続けていって我慢が出来るはずもなかった。

そんな蘭の爆発から新一も流石にこのまま蘭一人に事務所の諸々を任せるのは無理があると、義理の母である英理のツテを頼りどうにかならないかと相談した。まぁその時は英理も仕事が忙しいと言うことにちゃんと稼いでいて従業員になる人に給料を払えるならと、英理が何人か事務所のスタッフになってくれる人物を紹介してくれたことにより蘭もそうだが蘭の癇癪を受けなくなった新一は余裕を持てることになったのだが・・・それも時間が経つごとに状況がどんどん変わっていったのである。









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