・・・工藤新一。その名もそうだが、その異名である現代のホームズという名もまた日本に広く知れ渡っていた。難解な事件があれば即座に解決し、探偵として依頼を出せば百発百中で依頼を無事に成し遂げる名探偵としてテレビでも扱われたこともある。

そんな工藤新一は高校生の時に一時期人前にほとんど出てこない時期があったが、その一時期を除けば名探偵としての活動をずっと続けていた。小さい頃から事件があれば解決に赴いていたが、義理の父親が使っていた探偵事務所を譲り受けた後に職業探偵となってからもだ。

そうして新一が活動をして数十年が経つのだが、そんな新一も歳を取り八十になって少し経った時・・・床に伏せ、死を待つだけの身となった。どうにかならないかと方々を頼っても新一の容態を診てもらった医者達曰く、若い頃から今までの活動による無理が体に来ていて手の施しようがないと揃って言われる形でだ。

その言葉に妻である蘭や親交のあった者達は悲嘆に暮れたが、新一は至って満足そうに精一杯生きてきたしこうやってベッドの上で皆に看取られて逝くなら幸せだとキザな笑顔を浮かべて口にして、周りもらしいことを言うと笑いに包まれた・・・そしてその数日後、工藤新一は還らぬ人となった・・・


















(・・・まさか地獄なんて物が存在するなんてな・・・でもこんな風に待合室みたいな所で順番待ちをするとは思わなかったが・・・)
・・・そして死後に辿り着いたあの世と呼ばれる場所にて、死に装束に身を包んだ白髪にシワがいくつも顔に刻まれた表情を苦笑に変えながら新一は内心で地獄があったことと今自分がいる場所についてを考えていた・・・ロマンチストであるが同時にリアリストでもある新一はオカルト的であったりファンタジー的な物は科学で解明出来ることだったり人為的に仕掛けられたトリックによるものだと思っていたが、地獄を円滑に動かすために忙しなく動く鬼だったり順番待ちの人達の為の待合室やら番号札などある光景や状態を見て存外現世と変わりはないのだというように認識して。
(まぁそれでも話に聞くとここから呼ばれたらいよいよ閻魔大王による裁きを受ける時間だって事だから、あんまり皆いい顔をしてなかったんだよな)
その上で周りに今は人はいないが、先に番号を呼ばれてもう誰もいない待合室の中の先程の光景を思い出す・・・番号を呼ばれた人が閻魔大王様による裁きを受ける番だと言われ、主に嫌だ嫌だというように騒いで表情を歪めていた光景を。
(・・・閻魔大王による裁きか。まぁ大丈夫だろ、俺なら)
しかし新一は楽観的に閻魔の裁きに関してを受け入れていた。何故なら自分は全く悪いことをしていないどころか、むしろ様々な事件を解決してきたのだから自分は話に聞くような過酷な地獄に行くようなことはないだろうと確信してだ。
「・・・最後の方どうぞ～」
「あ、はい。分かりました」
そう考えていた所で鬼の一人が順番が来たと報告に来たため、新一は椅子から立ち上がり先へと進む。閻魔大王がいるという場所の方へと。






(・・・でけぇ！こりゃマジに閻魔大王だな・・・！)
・・・そうして新一は先に進んだのだが、その部屋の中で一回りも二回りも体の大きな髭を生やした大男が体格に見あった机に備え付けられていた椅子に鎮座する姿に閻魔大王は本当にいたのだと半ば感激していた。伝説の存在に会えたのだと。
「今日最後の方ですね。こちらが閻魔大王になり、私が閻魔の第一補佐官の鬼灯と申します。貴方の裁判を担当させていただきますので、よろしくお願いいたします」
「っ、お願いします・・・(なんだこの鬼・・・妙な圧迫感を感じるぞ・・・)」
そんな風にしていた新一だが閻魔の隣にいた体格としては然程新一とは変わらない額にツノを生やした鬼の鬼灯からの自己紹介に、若干戸惑いつつ頭を下げる。ただならぬプレッシャーを鬼灯から感じたために。









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