いつかを変えることの代償 後編

・・・地獄の傀儡師として高遠が活動することに決めたのは、憧れのマジシャンであると共に後に近宮が高遠の母であると知った上で母が弟子達に殺された・・・と知ってからである。母からマジシャンの命とも言えるマジックのアイデアをまとめたトリックノートを奪い取った四人の弟子達を殺すことで、敵を取る為に。

そう決めた後に綿密な計画を練って近宮を死に追いやった四人の弟子達を殺すことにしたのだが、そこに居合わせた明智と共にいた金田一に連続殺人のトリックを見破られて高遠は警察に捕まることになった。

だがそこで事件が完全に終わったわけではなく、一人生き残った弟子の左近寺という人物が近宮から奪ったトリックノートの最後のページにあったマジック・・・無重力岩天蓋消失というマジックを舞台上で行った事で、左近寺はその身を炎に焼かれて一命を失うに至った。そのマジックは近宮が弟子達に襲われることを察知し、自身の死後に誰かがそのマジックをそのまま用いれば確実に失敗して死ぬという欠陥マジックだったが為に。

その上で更に言うなら高遠はそのマジックによって左近寺が死んだ後でタイミングを見計らったかのよう、刑務所から脱獄という行動を為し遂げた。この脱獄から明智もそうだが、金田一と高遠の間での因縁が生まれるのだが・・・そこについてはこの話ではあまり関係ないので、置いておこう。






「それで、母の反応についてはどうだったと?」
「・・・明智が言うには弟子達の行動に関しては作り話程度に捉えて動揺してない様子だったらしいが、そのマジックに加えてオメーの事を言ったら表情を一気に強張らせたらしい。ま、誰にも知られてない筈の事がホイホイ出てきたことに加えて、オメーが凶悪犯罪者になるなんざ想像もしてなかったからだろうがな」
「・・・そうでしょうね。私があのような行動に出るなど、母も想像していなかったでしょう」
それで話を戻そうと近宮の反応を聞く高遠に小五郎は正直に返す中で予測も交えて答え、その中身に目を閉じつつ何とも言えない様子を浮かべる・・・この辺りは親子として過ごしてきた時間が少ないとは言っても親として今は認識した上で、マジシャンとしても敬愛しているからこそ近宮の反応にどうしても感じるところが高遠にもあったが為に。
「・・・ちょいと今度は俺から質問だが、その肝心の近宮玲子本人はどうしてる?オメーならそれくらいは把握してるだろ」
「・・・明智警視から聞いているでしょうが、表向きは病気による療養中・・・その裏では山神達にトリックノートを渡して引退の道筋を作っていますよ。勿論あのマジックに関しては書いていない物を手渡してです」
「明智が提案した案をそのまま近宮玲子は採用したってことか・・・ただ引退しても山神達が近宮玲子をノート欲しさに襲いに来る可能性があるから、逆に体調不良による引退を切り出してノートを自ら手渡すことで山神達の手から逃れるようにしてほしいって案を」
「大方そういうことだろうとは思いましたが、効果は抜群だったようで最早山神達の中には師である母の引退など眼中にはないようで、四人でどうやってこのノートに書かれているマジックを使い自分達を売り出していくのか・・・その事を念入りに話し合っている場面を目撃しましたよ」
そんな姿に気を使ってか小五郎が近宮の近況についてを聞くと、高遠は律儀に答える中で山神達に対しては呆れを存分に含ませた声を漏らす。









.
4/17ページ
スキ