変わらないままではいられない、変わらずいてはいけない

「・・・毛利さんがそのように顔色を悪くする理由は分からないでもありません。毛利さんからすれば新一君は友人と呼べる立場の人の子どもであると同時に、蘭さんの将来的な結婚相手になるかもしれない可能性を秘めた人物であり性格もよく知っている子どもだからでしょう。けれどこういう言い方はよくありませんが、新一君の事件に遭遇する度合いはハッキリ言って異常と言ってもおかしくはありませんし、先程少し言いましたが事件を自分が解決するためにと敢えて警察に事件の全容の解明まで連絡を遅らせている節が新一君にはあります・・・言って分かるなら俺もそうする必要はないとは思います。ですが新一君は俺の言ったことの網をすり抜けるような形で事件に今も関わっていますし、今後も似たような事を続けられた場合にさっき言ったような事が起きたなら誰がどう責任を取るんですか?」
「っ!?」
だが無情にも半兵衛が続けた感情を取り除いた凍り付くような無感情な視線と言葉に、小五郎はビクリと体を大きく揺らした。責任、つまりは蘭の死か大きな罪を負った場合のことを考えるべき・・・そう半兵衛の様子もあって、否応なしに感じたために。
「・・・俺から言えることはここまでです。後は外に出てゆっくりと話し合った上で、二人を待っていてください。新一君という当事者に色々と話す以上は黒田監察官の話は長くなると思いますから、お二人でどうするかの方針についてを決める時間にあてる形で」
「・・・はい、分かりました・・・行くぞ、英理・・・」
「・・・えぇ・・・」
そして雰囲気を一新して半兵衛がいつも通りに退出と待機をするように言い渡すと、小五郎と英理は力なく立ち上がり部屋を退出していった・・・その背後で半兵衛が椅子に背中をもたれかからせ、脱力しきっている様子になど気にも止めることはないまま・・・


















(同時刻・別の部屋にて)



「・・・と言うことだ。工藤君、君が戻ってきてから様々な事件に巡り会うことはまだいい。しかし通報が遅れている節があることもそうだが、何より君達が犯人と争う事態が多いことにその被害額の多さ・・・こちらとしては流石にもうこれ以上は看過出来ぬということから、君達を呼び出したのだよ」
「「・・・っ!」」
・・・同じような部屋の造りに、同じような対面の図式。
そういった形で二人は官兵衛より半兵衛の言っていた別れさせるかの事以外についてを話し終えるのだが、眼光鋭く低温の抑揚が抑えられた声で話をされているのもあって圧されたように話を聞いていた。



(やりづれぇ・・・竹中警視もやりづらいとは思っちゃいたが、この人もまたすげぇやりづらい・・・むしろ竹中警視よりやりづらいかもしれない・・・)
そして新一自身、目の前の官兵衛の存在に相当にプレッシャーを受けていることを自覚していた・・・のらりくらりに飄々としていて掴み所のない半兵衛はプレッシャーというものをかけることは中々にないが、実直な性分の官兵衛は人との対峙の際に回りくどいことは言わずに言いたいことは素直に告げるし圧も単刀直入にかける・・・どちらがどちらともに人生経験の少ない新一からすれば厄介な人物ではあるが、プレッシャーがないという点で人生経験の少ない新一はまだ半兵衛が楽と取ったのだ。実際はどちらもどちらとも、対峙するには能力の高さから比べ物にするまでもなくどちらも厄介な相手であることなど感じないままに。









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