いつかを変えることの代償 後編
・・・小五郎の事務所に高遠というまさかの人物の来訪、それも明らかに前世の記憶持ちだと分かるような事実のオマケ付き・・・そんなまさかの出会いを果たした小五郎だが、その数時間後・・・そんな高遠と共に、居酒屋へと足を運んでいた。
「ほらよ、遠慮なく頼め。オメーの口に合うかどうかは知らねぇけどな」
「えぇ、では遠慮なく」
・・・居酒屋の座敷席に通され、対面上に座った高遠にメニューを手渡す小五郎に、高遠も自然にそのメニューに目を通す。
・・・さて、二人が何故居酒屋に来ているのかと言えば、単にある程度話をしていた時に事務所を閉める時間が来た上でまだまだ話をしたいが食事もしたいと小五郎が言い出したことからである。そして高遠もそれを了承したからだ。
こんなことを切り出したのは何故かと、前世の高遠が起こした行動の数々を知っている者なら小五郎に問い詰めるだろう。だが小五郎自身はそれが間違いではないと感じていた。少なくとも自分の身の危険という意味では。
「・・・しかし、随分と思いきった事を切り出しましたね毛利さん。私の事は明智警視から聞いていた筈ですが」
「あ~・・・その明智から話を聞いたってのもあるが、実際に会って話した所で何となく感じたんだよ。オメーがその気になりゃ多分俺なんざ簡単に殺せるんだろうが、そうしねぇでわざわざ正面から訪ねてきたってことは少なくとも今俺をどうこうしようって気はねぇんだろうってな」
「それが私の手法だと考えはしなかったのですか?」
「・・・今そう聞いて有り得なくはねぇと思ったが、そうなったらそうなっただ。どっちにしろオメーが満足するまでは話に付き合ってやっから、料理をつまみながら話をするぞ」
「クス・・・変わった方というか、肝が据わっていますね。それも前世からの経験があるからでしょうが」
「うるせー」
・・・それで一通り頼んだ酒と料理も来たところで高遠の挑発めいたようでいて真実を話してもいるような語り口に、小五郎が本音を余すことなく返すと微笑を浮かべる。
・・・実際の所の高遠の本音を小五郎は推し量れない。もし高遠が自分を騙すなり殺すなりするなら、小五郎自身が言ったようにそれを見抜く事など出来ない方に自信がある。
そんなことを踏まえても、小五郎は目の前の高遠が話をしに来ただけというのが嘘には感じられなかった。ただ単にそれが騙されているからということも有り得るだろうが、それでもそう感じたからにはいっそビクビクするよりはその直感を信じて高遠と腰を据えて話し合うのがいいと感じたのだ。その方が下手に高遠と対峙するよりは危険はないだろうと。
「・・・それで、何から話をしますか?毛利さんの事務所では自己紹介と細々とした話程度しか話せていませんからねぇ・・・」
「んじゃ改めて聞くが、明智じゃなくて俺の方に顔を出したのは直接顔を合わせたくないってのが理由でいいんだな?」
「えぇ、そうですね。あちらは私が記憶を持っていると知ったなら過度に私を警戒するでしょうが、私としてはそんなことになるのは望んでいないのですよ。こうして戻ってきてから一度も犯罪に手を染めてないのもありますが、母の件で一応は礼を人伝とは言えお伝えしたかったですから」
「近宮玲子の事か・・・」
そんな空気の中で自らどういった話題にするかと切り出す高遠に小五郎が何故自分の元に来たのかを問うと、その通りと返しつつ出てきた母という単語に小五郎は反応する。近宮玲子という個人名を呟く形で。
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「ほらよ、遠慮なく頼め。オメーの口に合うかどうかは知らねぇけどな」
「えぇ、では遠慮なく」
・・・居酒屋の座敷席に通され、対面上に座った高遠にメニューを手渡す小五郎に、高遠も自然にそのメニューに目を通す。
・・・さて、二人が何故居酒屋に来ているのかと言えば、単にある程度話をしていた時に事務所を閉める時間が来た上でまだまだ話をしたいが食事もしたいと小五郎が言い出したことからである。そして高遠もそれを了承したからだ。
こんなことを切り出したのは何故かと、前世の高遠が起こした行動の数々を知っている者なら小五郎に問い詰めるだろう。だが小五郎自身はそれが間違いではないと感じていた。少なくとも自分の身の危険という意味では。
「・・・しかし、随分と思いきった事を切り出しましたね毛利さん。私の事は明智警視から聞いていた筈ですが」
「あ~・・・その明智から話を聞いたってのもあるが、実際に会って話した所で何となく感じたんだよ。オメーがその気になりゃ多分俺なんざ簡単に殺せるんだろうが、そうしねぇでわざわざ正面から訪ねてきたってことは少なくとも今俺をどうこうしようって気はねぇんだろうってな」
「それが私の手法だと考えはしなかったのですか?」
「・・・今そう聞いて有り得なくはねぇと思ったが、そうなったらそうなっただ。どっちにしろオメーが満足するまでは話に付き合ってやっから、料理をつまみながら話をするぞ」
「クス・・・変わった方というか、肝が据わっていますね。それも前世からの経験があるからでしょうが」
「うるせー」
・・・それで一通り頼んだ酒と料理も来たところで高遠の挑発めいたようでいて真実を話してもいるような語り口に、小五郎が本音を余すことなく返すと微笑を浮かべる。
・・・実際の所の高遠の本音を小五郎は推し量れない。もし高遠が自分を騙すなり殺すなりするなら、小五郎自身が言ったようにそれを見抜く事など出来ない方に自信がある。
そんなことを踏まえても、小五郎は目の前の高遠が話をしに来ただけというのが嘘には感じられなかった。ただ単にそれが騙されているからということも有り得るだろうが、それでもそう感じたからにはいっそビクビクするよりはその直感を信じて高遠と腰を据えて話し合うのがいいと感じたのだ。その方が下手に高遠と対峙するよりは危険はないだろうと。
「・・・それで、何から話をしますか?毛利さんの事務所では自己紹介と細々とした話程度しか話せていませんからねぇ・・・」
「んじゃ改めて聞くが、明智じゃなくて俺の方に顔を出したのは直接顔を合わせたくないってのが理由でいいんだな?」
「えぇ、そうですね。あちらは私が記憶を持っていると知ったなら過度に私を警戒するでしょうが、私としてはそんなことになるのは望んでいないのですよ。こうして戻ってきてから一度も犯罪に手を染めてないのもありますが、母の件で一応は礼を人伝とは言えお伝えしたかったですから」
「近宮玲子の事か・・・」
そんな空気の中で自らどういった話題にするかと切り出す高遠に小五郎が何故自分の元に来たのかを問うと、その通りと返しつつ出てきた母という単語に小五郎は反応する。近宮玲子という個人名を呟く形で。
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