変わらないままではいられない、変わらずいてはいけない

「だから悪いが、僕からは君の手助けをすることは出来ない。そもそも君との関係はどういうことなのかと秘密裏に話が通るならまだともかく、下手に表沙汰になりかねない状態で迂闊に話をすればなし崩しに君が『江戸川コナン』であったことに組織の事が世に出かねないからね」
「っ!・・・分かりました、降谷さん・・・」
更にそこで協力出来ない上で迂闊な事は出来ないといった事を口にする降谷に、新一は衝撃を受けた後に諦めつつ頭を下げた・・・組織を壊滅させたことは確かではあっても表沙汰に出来ないことは多々あり、警察であっても公安と一部の人間以外に組織関連の情報を流すことは出来ない・・・他の機関とも協力しあったこともあるが、そういったように話をして取り決めた為に新一と降谷の関係性を明かすことすら出来ない状況にあることを理解して・・・


















・・・そうして新一との話を終えた降谷は工藤邸を出て、帰路に着くべく車を運転していく。
「・・・一応は困ったことがあれば連絡してくれとは言ったが、出来ればあまり捜査関係で連絡をしてほしくはないな・・・あの話を聞いた後だからこそ、尚更にそう思える・・・」
その車の中で降谷は苦い想いを顔に表しながら一人言を口にしていく。新一に対する複雑な想いを。






・・・降谷からすれば、新一には色々と世話になったし組織の壊滅に多大に貢献してくれたことから心情的には同情したいし味方をしたいといった考えがある。しかし新一が『江戸川コナン』時代にこんな風な事を半兵衛にされた上で灰原に見切りをつけられたことから毛利家を離れることになったという経緯を聞かされた時、半兵衛の警察の上の意向を代弁した答えに異を唱えるような考えが浮かぶことはなかった。

・・・公安という立場にいて普通の警察なら違法捜査と呼ぶのも生温いレベルの事をしている降谷だが、それでも警察としての誇りに立場を忘れてはいない。むしろ日本の為にと愛国心を燃やすくらいには警察としての自覚を持っている上で、その仕事に入れ込んでいるといった自負もある。

だからこそとも言えるが新一に関連する事柄と言われた言葉の数々に対して、警察としての立場から言っていることが間違ってないことから苦い気持ちを抱いた。知り合って組織を共に壊滅させる為に動いてきた仲間とも言える存在が、まさかそのような形で警察から問題視されているとは思わなかった為にだ。

しかしそうして苦い気持ちを抱きはしたものの、新一の能力もそうだが何よりも組織に対する執念を見たことにより、下手に距離を離して予想外の事を起こされるよりは自分の手の届く範囲にいてもらい協力しあう方がいいと考えて動いてきた。警察の上層部の考えを知った上で尚、使える物は使おうと割り切る形でだ。

そうして結果として組織の壊滅を無事に為し遂げ新一は灰原の作った解毒薬により共に元の体に戻った訳だが、そうなったからにはもう警察の人間として以降に協力をしてもらうことなど願うべきではない・・・そう降谷は考えた。警察の一員として言っていることは理解出来たし、何より新一にも言ったが両兵衛の二人に歯向かっても勝ち目はないと見たために。






「願わくは新一君がこれ以降事件に関わるようなことに問題が起こるようなことがなければいいんだけどね・・・」
そして降谷は切実な声を漏らすのだが、それが実現しないだろうことは半ば諦めに近い領域で確信していた。新一の性格もあるが最早体質レベルで事件を引き寄せるその運回りから、以降も多くの事件に関わることに問題は起きるだろうと・・・










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