元世界最高の探偵が物語に加わ・・・らないだけの話

勿論小さな頃に初めて事件に出会ってしばらくする頃くらいはまだこんな風に考えてはいなかった。新一も小さくて謎解きなど出来るような状態ではなかったし、優作がやたらと事件に出くわすことはよくある事だといったように認識していた程度だった為に。

しかし時が経つにつれて事件が最早日常的に工藤家の周りで発生することに加え、優作の影響で探偵になると小さい頃から公言するようになった上に事件を呼び寄せる性質を持った新一の近くにいたことから頼人が工藤家での活動と言うか、どのような立ち位置にするかを決めたのだ。それが探偵や謎解きには興味のない、勉強に集中する子どもを演じると言うものである。

これは前世の経験があることに加え、元々の頼人の見た目として前世と変わっていないことからインドア派で勉強が好きだというように見せることには苦労はなかったし、疑われることもなかった。頼人の勉強の成績が工藤家の人間らしくと言ってもいいのか大人と比べてもずば抜けてよかったこともあるが、頼人が出なければ解決しないような難解な事件もなくて発言する必要もなかった為に。

・・・そうして表向きは勉強に夢中なインドア少年になった頼人はそういったように振る舞うことで事件の際に巻き込まれたり呼び出されることがかなり少なくなった(それでも新一と一緒にいると巻き込まれる事が多かったので、出来る限り新一と出掛けるような事態は避けれる時は避けるようにした)ので正しかったのだと自身で感じてきたのだが、そんな頼人の事を気にかけていたのが小五郎なのである。

毛利家とは有希子が小五郎と現在別居中の小五郎の奥さんの英理と同級生だった為に昔からの付き合いがあって頼人もよく会っていたのだが、蘭は頼人に視線を向けることなく新一に一直線だった為に必然的に小五郎が頼人の相手をすることが多かった。そしてその時に小五郎の不器用ながらも確かな気遣いを向けてくる様子は、頼人からしたら余程優作や有希子よりまともな人らしい人として・・・親らしい親としての姿に見えた。

優作達は今の状態から分かるように出来る子だと分かったならと放任主義を地でいくような性格に考え方をしているし、そんな部分も含めてズレを感じているからこそなおのこと小五郎が親のように感じたし蘭の事を羨ましく思ったこともあったのだ。だからこそ不器用であり人間味の強い小五郎の事を頼人なりに気にかけていたのだが、今回帰ってきて新一の行動に盛大に巻き込まれていることに関していくらかの不快感を感じずにはいられなかった。小五郎の事を考えているようでは全くいそうにない新一や、事情を知っているであろう優作や有希子に対してだ。

だが一応というか、頼人は今新一達がやっていることに何も知らぬ存ぜぬで通して巻き込まれないように動くつもりである・・・故にせめてもの詫びとして、新一が元に戻るなり小五郎が何か不都合な事が起きたならすぐに頼人は助けを出せるようにしようと決めた。工藤家の一員という自覚は薄いがそれでも身内の行動による被害者にかりかねない上に、日本にいる間でも離れてる時でも小五郎の娘である蘭は基本的に新一に寄った発言に行動をすることは見てきたし、これからもそうするだろうと・・・そういった事を考えれば、小五郎が悲惨な目に合う可能性は非常に高いと見たためにだ。









.
12/14ページ
スキ