元世界最高の探偵が物語に加わ・・・らないだけの話

・・・頼人が予測したような小五郎の行動について、自分が真に悪いとは新一達は思わないだろうと頼人は見ている。実力に不釣り合いに有名にして立場的に面倒なことにしたことに関して、自分達がそうしたことは少しは悪いことをしたとは思ってはいるが今まで有名になったことで得られた恩恵はあっただろうし、何より迷惑をかけた慰謝料を払うのだからこれでイーブンだといったように。

しかしそう思うのはあくまで新一達からしての満足が得られたからであり、小五郎ならこれで納得してくれるだろうと勝手に自己解決に自己満足した結果での押し付けでしかない。そこに小五郎の意地を考えてというのもそうだが、そもそも自分達と小五郎の考えがズレているといった考えにならない・・・となると頼人は見ていた。そもそも頼人自身、そういった自身の感性と工藤家の感性が違っていると感じたからこそアメリカの大学に行くと離れることを選択したのだから。






「・・・まぁ工藤家はもうあれでいいでしょうし、あれで変わりようもないんでしょう。どのように生きるかなんて生き方を強制するつもりは私にはありませんし、私も工藤家に縛られるつもりもありませんからね。端から聞けば無情だとか言われるかもしれませんが、感性のズレた人達と親子の付き合いをするのも疲れますしそんな気も起きませんからね・・・まぁ毛利さんには同情はしますが、何か変化があったら私個人で彼を助けるように動きますか。蘭はどうせ新一とくっつくでしょうから、毛利さんの助けにならないでしょうしね」
ただそういったように言った後で、もういいかというように漏らす。小五郎に対しては想いは見せつつも、その娘の蘭に工藤家に対しては情などないと言ったように。






・・・前世の経験がある頼人は工藤家の一員として生まれたが、家族に対する情を抱いた覚えはない。確かに大事に育てられたとは思ってはいるし、感謝もしてはいる・・・だがどうしても見えてくる人としての粗と言うか、普通の人とはズレた感覚を目の当たりにしていく度にLとしての記憶がある頼人からすれば家族に合わせる方が面倒だという感覚になっていったのだ。

なら何が面倒なのかと言えば日常生活を送っているだけなのに、日常レベルに事件が身の回りに発生することもそうだが何より人として・・・新一に関しては探偵として勧善懲悪を成したと満足し、それが普通だといったように活動していたことだ。

Lとして活動していた頃に探偵として受けた仕事では、事件の解決の為に頭脳を働かせていた。しかしそれは誰かから依頼をされた上で事件を解決してほしいからと言われたためであって、決して自分から無償で慈善事業のように事件を解決してきた訳ではない。むしろこれだけ出すからと大金を用意する旨を伝えられ、取引を経て商売としてやってきたのだ。

無論そこで相当に頭を働かせて事件を解決しようと考え動いた事実に関しては偽りはないが、頼人の場合はプロ意識というか探偵は慈善事業でやるような仕事ではないという認識を持っているし、小五郎という世間一般からしての普通の探偵はこういうものだという認識がある。そしてそういった認識があるからこそ探偵が正義の存在であり、自分達もまたそうであり事件とよく出会い無償で解決することも当然・・・といった工藤家の考えを受け入れる事が次第に出来なくなっていったのだ。別段自分を正義と思ってもおらず、探偵はそんな存在ではないと考える相違からだ。









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