元世界最高の探偵が物語に加わ・・・らないだけの話

「しかし新一に父さん達は考えているんですかね?もし自分が元に戻るかそれが出来ないか、もしくは何らかの事情があって『江戸川コナン』が毛利さんの元から離れた後の事を・・・これだけ派手に名探偵だとか眠りの小五郎だなんて銘打たれて、『江戸川コナン』がいなくなった後でどう毛利さんがなるのかなんて想像に難くない筈ですが・・・まぁ考えてないでしょうね。これだけ毛利さんを有名にしてしまうことがどれだけの不幸を毛利さんにもたらすかということなど」
そうして頼人はパソコンの中の記事を見ながら新一達が小五郎に関する事を考えてないだろう事を口にし、呆れた様子を浮かべる。






・・・『江戸川コナン』が新一だと考えた頼人だが、そこで小五郎の現在が新一の暗躍によるものであることもまた気付いた。言ってはなんだが小五郎の頭の出来を知っている事から、まず新一が行動していなければこんな名探偵だなどと呼ばれるようなことにはなっていないだろうと。

しかしそれで数多の事件を解決してきて新一が小五郎の元をいかな理由でも離れる事になったなら、小五郎がどうなるか・・・頼人にはその時、小五郎が不憫な結果になる絵以外が想像が出来なかった。新一が自分がいなくなった後の小五郎の名声を維持する為に動くと考えづらかったのもあるが、何より小五郎の意地から新一や優作達に落ちぶれた姿など見せられないし大丈夫だと強がりを見せるだろうと考えてだ。

そしてそうなれば新一達が小五郎に小さくなったことに関しての事実を明かすかどうかがある程度の分かれ目になるとは思うが、明かさないなら明かさないででもそうだが明かした時の方が小五郎は新一達からの手助けを拒むだろうことは頼人には想像が出来た。

小五郎は金にはだらしない面はあるが、それでも理由なしに金を渡すといった事をされて無条件で受け取ると言ったような事をすることはない。探偵として長いこと活動してきた小五郎はそういった無条件での金銭の受諾がどれだけ危険なことか、様々なトラブルを見てきたが為にだ。

それに頼人は知らないことだが『江戸川コナン』をよろしくと変装した有希子から一千万の養育費としての名分の金を渡された時は予想以上の金額に喜びはしたし自分達へのお礼の分もあると見たが、それでも『江戸川コナン』の事を考えて必要な事に関してはともかくとしても自分の事の為に金額を下ろすようなことはしていない。一応人の子を預かっている為、自分の失敗により家計が苦しくなったことはあっても自分がその補填の為に使うわけにはいかないと考えてだ。

そんな小五郎の性質を新一達より余程理解している頼人は新一達が離れて以降、名声を失いキツい状況に陥るだろう小五郎が意地の為に新一達の手を求める事はないだろうと考えた。そして新一はそんな小五郎が落ちぶれていく姿を見ながらも、自分達の手を取らないことをいつもの調子がよくて金に飛び付くおっちゃんがなんでと疑問に思いながら動くだろうとも。

・・・普段というか事件が起きる際には察しが良すぎるなんてレベルではないレベルの頭の回転を見せる新一達だが、こういった人間関係ではあまり奮わない理由があることを頼人は知っている。それは・・・






「そもそも自分達のやることに間違いはないし、正義だと考えている事がおかしな話なんですよ。特に新一は探偵が正義であり、自分もまた正義であるから間違いはない・・・と言ったような考えを変えるようなつもりすら一切見えないのはね」
そして更に頼人は自分以外の工藤家、特に新一に対して厳しい言葉を口にした。本人達が聞いたなら確実に戸惑いや怒りを覚えるだろう言葉を。









.
9/14ページ
スキ