元世界最高の探偵が物語に加わ・・・らないだけの話

「ですので別に差し迫るようなことは私には何もありませんから、気にしなくても構いませんよ。本音を言うなら新一にはアメリカでこれからも暮らすとは話をしてはおきたかったんですけれどね」
「えっ!?頼人兄ちゃん日本に帰らないの!?」
だが頼人から続けられた言葉に新一はたまらず驚きに声を上げた。アメリカに滞在し続けるとの考えを聞いて。
「大学を卒業して日本に帰ってきたとして高校に通うことも出来ない訳ではありませんが、今更学生生活をする気にはなれません。それに向こうで私に仕事を斡旋してくれると言った人がいて、それが悪くないと思ったから受けるつもりでいます」
「そうなんだ・・・新一兄ちゃんには電話するの?」
「そうするつもりでしたが話を聞く限り連絡がまず取れない状況にあるとのことですからね。ですから毛利さんに新一に会ったらその旨を伝えてほしいとは話はしました。新一は私の話を自分が決めたならと認めてはくれるでしょうし、仮に反対してくるなら電話してくるでしょうからその時に話をしますよ」
「そうなんだ・・・(頼人の決意は固い、か・・・これは俺が何かを言っても無駄だろうし、むしろ応援するべきなのかもな・・・アメリカに飛び級で入るって言い出した時のように、自立する気持ちを・・・)」
頼人はそうする理由もそうだが引くつもりはないと話をし、新一もその気持ちを知って帰るようにとの説得をする気が無くなっていた。やりたいと思えることをやろうとしている頼人を邪魔するようなことは出来ないと。
「・・・少し話しすぎましたね。では私は妃弁護士にお土産を渡しに行きますからこれで失礼します」
「おう、日本に帰ってきたら遠慮なくこっちに来いよ」
「じゃあね、頼人兄ちゃん!」
そうして改めてもう出ると傍らに置いてあった袋を持ちながら言う頼人に小五郎もそうだが、新一も送る言葉を元気よくかける。本当にただ帰ってきただけだと分かったからこそ、気持ちよく見送ることが出来ると・・・


















・・・そうして頼人が戻ってきた事が毛利家のその日の話題を占めることになった。蘭はその姿を見てはいなかったが久しぶりに会いたいといったように言い、英理からも珍しく頼人の事で小五郎の元に電話をする形でだ。

そしてそう言った話題を行った後、新一は本当の両親である工藤夫妻へと隠れる形で連絡をする。閉められた探偵事務所の中に入り、誰にも見られないようにする形で。






『そうか、頼人が・・・』
「多分近い内に連絡が入ると思うけど、父さん達はどう思うんだ?頼人の判断は?」
『私もそうだが、有希子も反対はしないさ。たまにだが様子を見に行く限りでは元気にしていたし、大学もこの時期に単位は大丈夫だと言って時間を取って一時帰国している以上は本当に頼人は問題ないと考えて行動しているのだろう。あの子はそう言った誤魔化すような嘘はつかないし、勉強と言う分野においては新一より熱心だったからな』
「まぁ純粋な勉強じゃ頼人には勝てないけど、そんな風に言うなよ父さん」
『ははは、済まないな』
・・・それで電話の向こうにいる優作へと一通り話を終えた新一は、親子として穏やかな会話をする。頼人の事について親として、兄として・・・微笑ましいという気持ちを抱く形で。
「ただちょっと流石に申し訳無いって気持ちにはなったな・・・電話が無かったから言わなかったって言っても、今俺が家にいなくて代わりに昴さんがいるって知らせてなかったから変なことになったし・・・」
『そこについては私も悪かったとは思っているさ。だが探偵としてではなく一学生としてアメリカに単身留学している頼人をわざわざ巻き込む必要はない・・・そう思ったから新一の事に感じて無関係でいさせようと二人で決めたし、新一もそれでいいと決めたのだろう?』
「まぁな・・・」
しかし頼人について申し訳無いといった会話に流れは変わり、二人は何とも言い難い空気を滲ませる。









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