イレギュラーによる解決と変遷

『・・・その時はその時でまた貴方が行動するということでいいけれど、電話を切る前に最後に一つ聞かせてもらっていいかしら?』
「ん?なんだい?」
志保はそれでいいと言いつつ最後の質問をしたいと切り出すと、蔵馬は表情を元に戻しつつ先を促す。
『完全に細かくは出来なくても記憶や思考の操作が出来るのなら、いっそのことそこに来た時に彼の記憶を操作した上でもう二度と私達に近付かないようにといったようにしなかったのは何でなの?そうした方が早かったのは目に見えているし、わざわざ後々の対応を考える必要はなかった筈よ』
「あぁ、その事か・・・確かに手早くはあっただろうがまぁ彼に精神的なダメージを出来るだけ与えることに、教訓を得てほしかったっていうのもあるからだね」
『ダメージに教訓?』
志保が口にして来たのは何故新一に対して手早くさっさと終わらせなかったのかということで、蔵馬が返した答えにまた疑問と言った声を漏らす。
「色々と問題はあるがあれでも悪人ではないということは分かっているし、様々に起こる難解な謎の多い事件の解決に彼がその能力から何役も買っているのは事実ではある。実際にバーボンではないにしても、俺が裏で行動をしていると見越したことに関しては丸っきり見当外れというわけではなかったからね・・・でも俺が隙を見せなかったからとはいえ、無関係の人物でも怪しいと思えば捜査を強行していいなんて思うのは間違ってると認識してもらった方がいいだろうという考えがあったからあぁしたんだよ。いくら言葉だけで色々言った所で彼は今までこれで成功してきたんだから、今回も大丈夫だとかうまくやれる・・・みたいな気持ちに考えを抱かないようにするための教訓の為にもそうしようと思ったのさ。確かに今までの事全てを許すのは難しいし彼の事を好ましいかと聞かれれば話は別だが、それでも彼が生きていれば吸い寄せられるような形ではあるとは言え数多の事件を解決していくだろうからね」
『そういうことだったのね・・・と言っても工藤君がそう言ったように認識するかどうかはまた別問題だと思うけれど・・・』
「そこまでは俺の関与する事じゃないし、彼がどういう末路を辿るかなんて尚更に興味の無いことさ。そもそもを言うなら怪しげな取引現場を見てジンに殺されかけた事を迂闊と教訓にするべきではあっただろうが、彼の中では単なる油断をしたと言った程度・・・と言ってもかなり身体的に大きな被害があったけれど、彼にとってはその程度くらいのことで考えを改めることは出来なかったんだからね。だから今回の事で散々言われたことから自責の念に駆られて今までの態度を変えようと出来なければそれまでになるし、俺達の元に来るようであればもう終わりだということだ」
『・・・願わくは、これ以上の面倒を避けるためにもそうならずに工藤君が自重してくれる方がいいってことね・・・世話になった身としてはそうなってほしいわ』
蔵馬はその意味については新一の心変わりを願っての物だと話していき、志保はその効果があるかどうかについてを聞くが結果に興味はないとハッキリ言い切る言葉に対し、志保は少しは新一に持ち直してほしいと願う。蔵馬よりは新一と関係に気持ちがあったために、一応という気持ちを抱いて。









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