イレギュラーによる解決と変遷

「まぁ流石に貴方でも、その時に単独で組織に潜入して全員捕らえるだなんて行動を取るとは私も思っていないわ。でもその時『江戸川コナン』だった貴方の立場を考えれば目暮警部達を頼るなんて簡単に出来るはずはないし、仮にバーボン達を始めとした様々な機関からのスパイ達と関係を作ることが出来て組織との対峙が出来たとして、貴方に何が出来るかもそうだけれど・・・誰一人事故の形ででも殺すなとか、向こうが銃などを向けてきても捕らえるだけに済ませてくれなんて貴方の立場で言えたと思う?」
『そっ!?それは・・・!』
「勿論犯罪者でも死ぬべきじゃないとかそういった考えを持つのを悪いとは言わないわ。けれどジンだけが驚異という訳ではなかったにしても、ジン一人を例にして挙げるだけでもジン相手に殺さずに無力化をするだけがどれだけ難しいかは貴方も少なからずは分かるはずよ。そしてそうして組織との戦いに勝ったとしても、貴方の望みで殺さないという誓いを守って殺された人達がいたなら貴方はどういう責任の取り方をして報いるつもりだったのかしら?」
『っ・・・それは・・・それ、は・・・』
「・・・ホラ、この時点でもう駄目じゃない貴方。運良くバーボンを始めとしたスパイ達と協力しあうなんて展開になっていたとしても確実にうまく行くなんて保証はないのに、絵に描いた餅の形ででも貴方は組織とどう向き合い壊滅させるのかを考えていなかった・・・実際に最終的な組織との決戦が近付けば話は別みたいな言い方も出来るかもしれないけれど、その時の為にと少しはシミュレーションしようとすら考えてもいなかった人が実際に組織を壊滅させた彼に対して因縁をつけようとするのはお門違いもいいところよ。立場や身体的な条件の違いがあったとは言え、具体的な事はさっき言ったことも含めて何も考えていなかったような人にはね」
『っ・・・!』
その上で一応の前置きをした後に志保は組織との対峙の際の考えについての態度を次々と挙げていくが、最早新一はろくな反論すら出来ずに声を失っていくしかなかった。いかに組織に対しての新一の考え方が甘かったのかに考えなしだったのかと、否応なしに突き付けられていったことに。
「・・・工藤君。私は最初こそは怖いという気持ちを彼に抱いたけれど、もう今は感謝という気持ちしかないわ。組織を壊滅させてくれた上に私達の為にと動いてくれたことにね。そして貴方にも感謝はしているわ。貴方がいなかったら今頃私はどこかで野垂れ死んでいるか、あまり良くない状態になっていたことは想像に難くないもの・・・でももうそれとこれとは別よ。これ以降はもう私にはどうしてもという時以外は連絡してこないで。事件の手伝いはどうしてもの用件に含まない形でね」
『なっ・・・何でいきなりそんなこと・・・!?』
「貴方が彼に対して今どういう気持ちになってるかに、また行動を起こすかどうかを考えているかなんかにはもう興味はないわ。でも体が元に戻ってからこの電話での会話に至るまでに貴方がどれだけ人の話を聞かないばかりか、南野さんという人にまで酷く迷惑をかけた行為を考えれば貴方の考えや行動に巻き込まれるのはもう真っ平なのよ。特にまだ彼の正体を探りたいだとかの考えでこれからもまとわりつかれるなんてのは、彼の事を言う気もなくて恩義を感じている私からすれば不愉快極まりないわ・・・それにもしまず有り得ないけれど彼の正体に気付いたとして正体を暴いてやったんだみたいなことを貴方に得意気な顔で言われたとしたら、呆れる云々どころじゃなくて怒りに殺意の方が芽生えると思うわ。自己満足の為だけに他人に散々迷惑をかけて、彼の正体を勝手に恩知らずに暴いておいて何をって思う形でね」
『っ!!』
・・・そして今までの話をまとめるよう新一への感謝はあっても蔵馬とは比べるまでもないと厳しい言葉を志保は並べ立てていき、新一はその言葉に息を盛大に呑む以外に出来なかった・・・どれだけ志保が本気で蔵馬に対しての思いがあるのかに、新一に対しての気持ちがもう単に離れていると言った程度に収まらないくらいに離れている上に尚も諦めずに蔵馬を追うと選択すれば、それこそこれ以上志保の心が離れる事態になるといやが上にでも理解させられる本気の具合だったために。









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