イレギュラーによる解決と変遷

「前にも話したが、あくまでもバーボンであった降谷零はその立場と名前を利用させてもらっただけだ。そんな彼を巻き込めば余計な事態になるのは目に見えている・・・だから君に電話をしてくるか直接会いに来るかはともかくとして、正体や本名までは知らないと答えるのと話を今から言うような中身についてするようにしてくれ。ここから先は表向きは正体を知らないはずの俺より、短くない時間を共にしてきた君だから言えることに彼にとって極めて不本意であろう事を言ってもらった方が効くだろうからね」
『・・・その話の中身を聞かせることで彼の追求を避けると共に終わらせるためね。分かったわ、話して』
だからこそ蔵馬がその新一をどうにかするための話をすると言うと、志保も覚悟を決めたと先を促す。新一と対するための話を聞くために。


















・・・それで真剣に綿密な打ち合わせの話をしてから電話を切って二時間後と言ったくらいに時間が進み、部屋の片付けをしていた時に携帯に志保から電話がかかってきた為に蔵馬は通話状態にして耳に電話をあてた。
「もしもし」
『もしもし・・・さっき工藤君から電話が入ったわ。中身は貴方がバーボンではないかと再確認してきたのと、ならバーボンは誰なのかという話よ』
「随分と早かったね。せめて日を跨ぐくらいはするかと思ったんだが、余程自分の予想が外れたことに加え俺に厳しく当たられた事が応えたと見えるが」
『えぇ。声色は完全に動揺に震えていたし、何があったのかを聞いたらさっきの貴方とのやり取りについてを話してきたわ。だから貴方と裏で繋がってるとかそんなことは抜きにまずは馬鹿でしょと言わせてもらったわ。南野さんは組織にいた人間でもスパイでもないって言ったのを信じなかったことに、家を勝手に調べられた上に事情も話さない事を簡単に許せる人間なんているはずないでしょって』
「そう言った時の彼の反応は?」
『・・・大分効いたようだけれど、本当に南野さんじゃないならバーボンは誰なんだ・・・よ。貴方に対しての疑いは流石に少しは無くなったにしても、バーボンの正体を知りたいと言った気持ちが薄れている訳ではないと再確認したから貴方に言われたように工藤君に言ったわ・・・そうしたら効果はてきめんだったわ』
「そうか、それは何よりだよ」
その電話の相手は志保で用向きは新一であると先程の会話についてを話していき、新一が凹んでいるであろうことに蔵馬は当然だとばかりに微笑む。
「ただもう少しその時の詳しい話が聞きたいんだが、時間は大丈夫かい?」
『えぇ、構わないわ』
その上で更に話をと望む蔵馬に、志保はすんなりと了承する・・・


















・・・少し時間は戻り、志保と新一の電話の場面になる。



『頼む、宮野!バーボンの正体を教えてくれ!お前の言うことは分かるが、今のままじゃどうしようもねーんだ!』
「・・・」
今住んでいる桑原家から離れた公園のベンチにて(桑原家にいたら話が漏れて聞こえるかもしれないからと、一度電話を切って公園に移動して再度電話をした)、電話口から切実な新一の声が聞こえてきた事に志保は周りに人がいないのを確認しているため不機嫌そうな顔を隠すことなく表情を歪めていた。分かっていたこととは言え、諦めの悪い新一の様子に。
「・・・ねぇ、工藤君。そうしてバーボンに会って、恨み言でも言うつもりなの?」
『えっ・・・な、何でいきなり恨み言だなんて言葉が出てくるんだよ・・・?』
「だってそうじゃない。私は彼やスパイとして送り込んできた機関に関して感謝はしても、彼らの立場上もあって深入りはしないようにするべきだって言ったわよね?でも貴方は私の言葉を聞かずに南野さんの所に行ったばかりか、反省しているといったように言いはしても結局はバーボンの正体が気になって仕方無いの一点張り・・・そこまで貴方がバーボンにこだわる理由は何なのかに会って何を言いたいのかを想像したら、組織を勝手に潰された恨み言を言いたいんじゃないかって思ったのよ。自分がどうにかしようと思っていたことを勝手に何をしてくれるんだ、みたいな風にね」
『っ・・・!』
そこから意を決して新一がバーボンにこだわる理由を推測する言葉を志保が口にしていくと、電話越しにでも分かるくらいに息を呑む音が志保の耳に入ってきた。当たらずとも遠からずといったよう、内心を見透かされたと言った驚きに満ちた様子がありありと分かるように。









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