いつかを変えることの代償 中編

「・・・どういうことかとお思いでしょうが、単純な話として私もこうやって過去に戻ってきてから毛利さんと同じように過去を変えるような事を行ったんですよ」
「何・・・一体何をしたってんだ・・・?」
「話せば長くなりますので後で聞きたいのであればお話ししますが、その為に行動を起こして結果として既にかつてを変えてしまいました・・・人から見ればより良い状況が作れるのなら、その方がいいだろうと思うかもしれません。ですが良かろうと悪かろうと先の事を知った上でその結果を変えるために動いたことには変わりはありませんから、私が毛利さんを責めるような事は言えませんよ」
「そうか・・・」
その理由についてを自分も行動を起こしたからこそ責められないと語る明智に、小五郎もそれ以上は追及せずに納める。明智も明智なりの道徳観により考えざるを得なかったことに、自分も同じような経験があるためにそれ以上は追及出来ないといったように。
「・・・すみません、いきなりこのようなことを言ってしまい」
「いや、言ってくれてこっちも気が楽になった。やったことがやったことなだけに軽蔑されることくらい覚悟してたんだが、こんな風にお前の事を聞いちまうとこっちも責める事は出来ねぇよ」
「そう言っていただけると、こちらも気が楽になります」
明智がそこで頭を下げるのだが小五郎が笑顔を見せて首を横に振る様子にホッとしたように柔らかい笑みを浮かべ返す。
「・・・なんつーか、確かにお前は新一達とは違うな。勿論こうやって過去に戻ってきたから変わったって部分もあるんだろうけどな」
「そう言っていただけるとありがたいですし、確かにそうですね。私も以前の経験がありますし、少しは丸くなったとは思います・・・まぁ軽蔑はしないと言いましたが、私個人としては結婚後の経緯を聞く限りでは余程うまくバランスを取らねば妃弁護士との結婚生活は成り立たないでしょうし、そういった精神状態になれないと毛利さんはおっしゃった・・・蘭さんの事については心残りではあるでしょうが、自分ではまた同じような事の繰り返しにだったりより悪くなることもあると考えた毛利さんの判断は間違っていないと思いますよ」
「・・・ありがとよ、そう言ってくれて」
そんな様子に明智の言葉が間違いではない事を認識する小五郎に、礼を言いつつフォローという名の本音と気遣いを返すと、心から安堵したと言ったように同じく礼で小五郎も返す。
「・・・毛利さん、もしよろしければ今後もまたこのようにお会いしていきませんか?私達は立場は違えど同じ身の上で、まだまだ話したいこともありますからね」
「そうだな・・・こっちとしても同じ逆行者に会えたんだから望むところだ。これからも仲良くしようぜ、明智」
「はい、よろしくお願いします毛利さん」
場の空気がどこか和んだ物へと変わったところで微笑を浮かべながら今後の事についてを口にする明智に、小五郎もまた笑顔を浮かべながら頷く・・・こうして話しあって共感しあえるからこそ同じ逆行者の仲間として分かりあえると、そう互いに理解しあう形で。


















・・・それから小五郎は明智とちょくちょく連絡を取り合い、食事に行くようになった。この事に関して二人ともに楽しく、時には真剣な話をすることで有意義な時間を過ごしていると感じていた。



‘ガチャッ’
「いらっしゃいませ、毛利探偵事務所へ。今日はどのようなご用でしょうか?」
とある日の昼間、誰も他にはいない事務所に入ってきた一人の客に椅子から立ち上がり応対する小五郎。
「いえ、今日は依頼をするために来たわけではありません。少々毛利さんとお話をしたいと思い、ここを訪れました」
「・・・俺と?」
だが客と思った目の前の痩せ方の優男が話をしたいと淡々と切り出したことに、小五郎はどういうことかと眉を寄せる。目の前の人物とは会ったこともないし、今回は有名になったわけでもないのにと。



「明智警視から私の事は聞いているでしょう?高遠遥一、地獄の傀儡師と呼ばれた人物の事は」



「っ!?」
・・・だが次の瞬間冷笑と共に口にされた名前と呼称に小五郎は驚愕した・・・明智と度々会う内に聞かされた凶悪な犯罪者であり、金田一とただならぬ因縁のあった人物の名前であったために。








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