イレギュラーによる解決と変遷

『・・・というわけで工藤君が薬を飲んだ後の経過を観察した数日後には博士の家を出て、貴方の紹介する桑原という人の家に向かうことにするわ。親戚の知り合いとして会ったことがあって、久し振りに再会して両親に姉が亡くなって身寄りがないと伝えたら身元保証人として身柄を引き受けると言ってくれたからそうすることにした・・・と言ったようにちゃんと工藤君達には伝えるから』
「あぁ、桑原君にその家族はいい人達だから君の事はすぐに受け入れてくれるだろう」
・・・電話の向こう側から声自体は変わっていないものの、どこか喜びを滲ませる灰原・・・いや、志保の声に蔵馬も微笑を浮かべながら返す。
『でも貴方はまだしばらくは元の所には戻らないのよね?』
「しょうがないさ。組織が潰れ、たまたま会ったバーボンにとある機関からのスパイという身分を明かされ、君が信頼出来るからと薬のデータを持ってきてほしいと頼むと組織壊滅の際にそのデータを持ってきた・・・その言葉が本当かどうかもそうだが、工藤君は君の警戒心の強さからそんな易々と誰かを信頼して頼みごとをするのかだったり、もしかしてバーボンは俺の知っている誰かなんじゃないか・・・と言ったように考えていることだろう。そしてそんな工藤君が怪しいと思うのは比較的に最近米花町に来て、事態が動いたのは『南野秀一』が来てからになる・・・そう考えて工藤君は俺に疑いを持つだろうね。俺が公安に所属していて、バーボンとして組織に潜入していたんじゃないかってね」
『・・・工藤君なら確かに考えそうね。貴方の事を怪しいと思って』
しかし志保がまだ帰らないことを残念そうに口にするが、蔵馬が返すバーボンは『南野秀一』ではと新一が疑う可能性についてに呆れたように新一に対する気持ちを口にする。
「と言っても俺の方には証拠はないからね。まぁ痛くない腹を探られても別に問題はないが、だからと言ってずっとまとわりつかれるのは俺としてもごめん被るというところだから君が行ってから少し経って戻ることにするよ。怪しいと思って俺の事を探りに来るだろうが、証拠が見つからずに『南野秀一』はバーボンではないと考えて離れる様を見届けてからね」
『貴方が行動していたこともそうだけど、貴方の正体にまで気付くのは流石に工藤君でも無理でしょうね』
しかし蔵馬は対して気にする事はないとあっさりしたように言い、志保も大丈夫だろうと返す。『南野秀一』の正体に取ってきた行動を新一が知れるはずはないだろうと。


















・・・それから数日後、志保から薬を飲んだ新一の経過を観察し終わったから米花町を出ると連絡を受けて戻ったら薬についての記憶を消しにいくと伝え、しばらくの間ポアロにて新一の通う学校の授業の終わりからの時間を蔵馬は過ごすことにした。新一が来るなら来るでいいが、別に来ないなら来ないでいいというように構える形でだ。



「・・・あの、すみません。ちょっといいですか?」
「ん?君は・・・工藤新一君かい?」
「え・・・俺の事知ってるんですか?」
「知っているさ、有名人だからね(まさか志保が米花町を離れて次の日にすぐに俺に会いに来るとは・・・)」
・・・ゆっくりと物憂げに文庫本を読みつつ、コーヒーを時折口にする。その姿は見る者が見れば眼福物だと言えるだろう。現に今は人はいないが、この蔵馬の姿を見たいと女性客が目当てに来ることもあるのだ。
そんな優雅な時間を過ごしていた蔵馬だが、高校の制服を着て元の体に戻った新一に声をかけられ笑顔で対応するが、内心では行動のあまりの早さに舌を巻いていた。自分の体が元に戻って普通に暮らしていいと志保から言われた上で、志保が米花町から離れた次の日に早速来るとは思っていなかったと。









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